シガー・ロス(Sigur Rós)@東京ガーデンシアター performing with ORCHESTRA
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Sigur Rós/Jónsi シガー・ロス, ヨンシー
約2年半ぶりとなる来日公演、東京公演の会場は前回と同じ東京ガーデンシアターだ。そして今回は、オーケストラとのコラボレーションというスタイルだ。
開演の5分くらい前、オーケストラの面々が入場し、それぞれの位置についた。定刻になると、女性バイオリニストを契機に音出しが始まり、そして場内が暗転。サポートのドラマーを含むシガー・ロスの4人と、指揮者が姿を見せた。
指揮者の指揮のもと、演奏がスタート。ステージは暗めで、最初のうちは立って歌うヨンシーしか認識できなかった。やがて、ゲオルグが向かって右に、キャンターが中央やや左にいることを確認。ヨンシー以外の3人は、出だしから数曲はキーボードを弾いていたと思い、曲によりポジションや楽器を変えていた。
何度かオーケストラつきのライヴを観たことはあるが、彼らの配置はアーティストの後方だったりあるいはステージ下のオーケストラピットだったりした。つまり、アーティストありきでその後方支援的な位置づけになっていたのだ。当然といえば当然だが、しかし今回は、オーケストラがステージいっぱいに陣取り、バンド4人もオーケストラの一員のようになっている。
ざっくりで、前方はバイオリンやコントラバスなどの弦楽器陣、中央にキーボードやピアノ、後方に管楽器、ひな壇にドラムセットや打楽器という布陣だ。ツアーでは現地のオーケストラとタッグを組んでいるとのことで、今回のオーケストラも日本人による編成だ。
ライヴは2部構成で、第1部はオーケストラとレコーディングした新譜『ÁTTA』からを軸にしていた。常時演奏しているのはシガー・ロスの4人で、オーケストラは割り当てられた各パートをこなすという構成に見えた。そうした中、『Starálfur』のときにはイントロで場内から拍手が起こった。
約20分の休憩をはさんで、第2部は『Untitled #1 – Vaka』でスタート。イントロを引っ張りに引っ張って、それがオーケストラアレンジによりスケール感が増幅している。インストの『Untitled #3 – Samskeyti』は、もちろんいい意味でだが、死ぬ間際に流れてきそうな音楽だと、聴くたびに思わされる。
今回、バックドロップには映像が流れず、ステージでの装飾といえば30個くらいの電球が設置されていたくらい。しかし、この電球群がライティングと相俟って、神秘的な空間を構築することに成功している。シンプルなセットは、このスタイルには合っていた。
第1部は『ÁTTA』の世界観構築をメインにしていたのに対し、こちらはキャリア横断型セットリストのようだ。予想してはいたが、オーケストラアレンジになって生まれ変わる曲と演奏を目の当たりにするにつけ、違和感がまるでない。相性のよさが際立っているのだ。
それが最高潮に達したのが、『Hoppípolla』のときだ。ピアノのイントロの時点で場内がざわつき、ヨンシーのヴォーカル、バンドの演奏そしてオーケストラと、演者たちの力量が結集されていく。ここまで抑え目だったドラムも、ついに太いビートを叩き出す。まさに極上の空間だ。
歌い終えるとヨンシーはステージを後にし、ラストはインストの『Avalon』。バンドと指揮者は袖に引き上げるが、すぐさまヨンシーを伴いステージ前方に整列。指揮者はオーケストラに立つよう促し、恒例のカーテンコールに。5人は袖に捌けるも、また戻ってきて2度目のカーテンコール。これも、お馴染みの光景だ。
セットリスト
第1部
Blóðberg
Ekki múkk
Fljótavík
8
Von
Andvari
Starálfur
Dauðalogn
Varðeldur
第2部
Untitled #1 – Vaka
Untitled #3 – Samskeyti
Heysátan
Ylur
Skel
All Alright
Untitled #5 – Álafoss
Sé lest
Hoppípolla
Avalon
『Hoppípolla』を歌い終えたとき、ヨンシーは「takk」(アイスランド語で「ありがとう」の意)と言ってくれた。途中、若干声がかすれ気味ではあったものの、この編成でステージをやり切ったことに満足したのではないかと思う。
10年ぶりにリリースされた『ÁTTA』はダウンロードリリースのみで(限定的にCDリリースもされたが、現在は入手困難)、これも時代の流れなのかなと思わされる。ではあるが、メンバーが安定して活動できていることに安心する。そして、何よりコンスタントに来日してくれていることが嬉しいのだ。
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