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陽はまた昇る(2002年)

公開日: : 最終更新日:2025/01/01 伝記/実話に基づく

陽はまた昇る

1970年代。日本ビクターの加賀谷は、横浜工場への異動(実質的な左遷)を命ぜられ、また2割の人員削減を強いられる。しかし加賀谷は、人とそこに宿る技術こそ無形なる財産と考えてリストラは行わず、本社には内密で家庭用ビデオデッキの開発に取り掛かる。当時はソニーがベータを既に開発/販売していて、他社もそれに追随するのではと思われていたのを、技術と消費者のニーズに応えた形で製品を完成させ、下馬評をひっくり返す。

加賀谷の元で働く大久保は出世を約束されたエリートで、加賀谷とも工員たちとも当初そりが合わなかった。しかし加賀谷に引っ張られる形で徐々に気持ちが動き、松下電器の相談役(つまり松下幸之助)に直談判に行こうと加賀谷に提案する。夜中をクルマで高速を飛ばして横浜から大阪まで走る車内で、ふたりが交わす会話がとてもよかった。

かつては加賀谷の下で働きながらもそのやり方について行けず、ビクターを辞めてレーザーディスクの開発に携わるべく松下電器に転職した江口がいる。直談判に来た加賀谷を見て、江口は加賀谷の熱意を後押しする形で松下幸之助に手紙を書く。他社がベータに流れずVHSに食いつくきっかけになったのは、松下電器がVHSを採用したからだった。

今では録画媒体はブルーレイディスクやDVDになっているが、そのひと世代前の録画媒体として世界標準となったVHSビデオデッキの誕生秘話を、実話に基づいて描いている。「プロジェクトX」でも、取り上げられたことがあるそうだ。

加賀谷を西田敏行、大久保を渡辺謙、江口を緒形直人、松下幸之助を仲代達矢、加賀谷の妻を真野響子、江口の恋人を篠原涼子、ビクター社長を夏八木勲と、結構な豪華キャスト。西田敏行の、存在感の大きさはさすが。そして、個人的には渡辺謙に魅了された。主役を張れる人だが、感情をむき出しにはせず抑えた演技で西田と渡り合い、やがて志を同じくして逆境に立ち向かっていくのだ。

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