フル・モンティ（1997年）

イギリスのシェフィールド。かつては鉄鋼で栄えた街も、不況で製鉄所は閉鎖となり、失業者が溢れる始末。息子の養育費が払えず親権を妻に奪われそうなガズは、あるとき男性ストリップショーに女性客が押し寄せているのに驚き、これが金儲けのチャンスと踏んで仲間を集めることに。しかし、集まってきたのは、失業していることを妻に言い出せないガズの元上司や、排気ガス自殺しようとしていた気弱な男など、それぞれに事情を抱えた男たちだった。

もちろん男性ストリップをすんなりとこなせるわけもなく、恥ずかしさがあったり、太った体形が悩みだったりする。また、会場を借りるお金もなく行き詰ったときに、ガズの息子が自分の貯金を差し出すところはちょっと泣けてくる。終盤、工場跡地で練習しているところを警察に見つかり、連行されてしまうが、これが思わぬ宣伝効果を生んでチケットが売れるという事態になり、当日満員御礼となるくだりは痛快だ。

一見、男性ストリップというとキワモノ作品かと思われるが、仕事を失った中年男性たちの悲哀が漂いつつ、同じ目標に向かって練習を重ね突き進むさまは、心温まるものがある。

ガズを、ロバート・カーライル。本作の前年には『トレインスポッティング』、2年後には『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』で悪役を演じ、この時期この人はピークを迎えていたと思う。本作では、決してスマートではないが、徐々になりふり構わずストリップに取り組み仲間を引っ張るさまには、応援したくなってくる。

ガズの元上司は、トム・ウィルキンソン。後年、『エターナル・サンシャイン』の博士や『ミッション：インポッシブル/ゴースト・プロトコル』でトム・クルーズ演じるイーサン・ハントの上司など、主人公に影響する年長者役を演じているが、本作での役はそのルーツのように思える。