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憐れみの3章(少しネタバレ)

憐れみの3章

【①R.M.F.の死】
上長に人を轢き殺すよう言われた男は、それを断る。すると妻は突然いなくなり、上長にも相手にされなくなり、かつて上長から贈られてきたプレゼントも、自宅からなくなってしまう。いきつけのバーでケガを装い女性と知り合うも、なぜか彼女は入院してしまう。

【②R.M.F.飛ぶ】
海洋研究家の妻が遭難してしまい、無事を願う警察官の夫。やがて妻が発見されて帰って来るが、飼っていた犬に吠えられたり、アレルギーで食べられなかったチョコレートを多量に食べたりする。夫は、彼女は別人ではと疑うようになり、やがて精神を病んでしまう。

【③R.M.F.サンドウィッチを食べる】
所属する教団に迎えるため、死者を復活させる特殊な能力を持つ人物を探している女。しかし、彼女は別れた夫に仕組まれて関係を持ってしまう。教団は彼女を不浄とみなして破門するが、彼女はひとりになっても特殊な能力を持つ人物を探し続ける。

165分の大作が3つの短編で成り立っていて、各短編につながりはない。そして、どの短編もストーリーは常軌を逸している。

①は上長の依頼を断ったばかりに、自分の身の回りが次々に奪われ、そればかりか上長に支配されていたことに主人公は気づく。依頼を断ったのは人としては当然(のはず)だが、バーで飲むカクテルを自分で選ぶことができない。その直後に女性と知り合うが、彼女もまた上長の男に支配されていたことがわかり、主人公は嫉妬を覚える。

②は、本作がR15指定であることを思い知らされる。女性陣の過激な性描写には驚かされ、警察官の夫が偽物と疑う妻に要求したことには、スクリーンから目をそむけてしまった。帰ってきた妻がイカれているのかと思いきや、夫が精神に異常を来してからは妻をしのぐイカれっぷりを見せる。ラストは、摩訶不思議なところに着地している。

③は、まずカルト教団がぶっ飛んでいる。要は水にこだわり性行為に耽る集団で、信者はサウナに入り、出てきた状態の腹部を女性の教祖が舐めて清浄か不浄かを判別。清浄と認められれば歓迎されるが、でなければ追放される。主人公の女性が探す能力者の条件は、双子の女性でひとりが亡くなっていることだった。

監督は、ヨルゴス・ランティモス。主要キャストは、同じ人が3編で違う役を演じている。、マーガレット・クアリーらで、ほかにも数人いる。

とにかくに似すぎているジェシー・プレモンスは、以前『ペンタゴン・ペーパーズ』にちょこっと出演しているのを観たことがあったが、今回は気を吐いている。エマ・ストーンとマーガレット・クアリーは、文字通り体を張っていて、よくこれらの役を引き受けたなと思わされる。

しかし、ずば抜けてぶっ飛んでいるのはウィレム・デフォーだ。①では恐らく大企業のCEOと思われる立場にあるが、人を使ったゲームをしているようでもある。②では、主人公の妻の父親とまだまともだが、③はカルト教団の代表だ。①と③ではバイセクシャルと思わせる節があって、先のふたりと同様、よくこの役を受けたなと思ってしまう。

各話タイトルになっている「R.M.F.」だが、実は同じ中年男性を指していて、着ているシャツの左胸にプリントされている文字が「R.M.F.」だった。①ではまさに轢き殺される標的の男、②はわかりにくかったが遭難した女性を送り返すヘリコプターの操縦士、③ではミッドクレジットに登場する。特段、意味はないのかもしれない。

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