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ハンニバル(映画・2001年)

ハンニバル

FBI捜査官のクラリス・スターリングは、麻薬捜査で銃撃戦となる。組織を壊滅させたものの、多数の犠牲者を出してしまい、遺族から告訴されてしまう。大富豪のメイスン・ヴァージャーは、報道で彼女が10年前に脱獄したハンニバル・レクターと関わりがあったことを知る。

政財界にも影響力を持つヴァージャーは、司法省のグランドラーを動かしてクラリスをレクター捜査に復帰させようとする。ヴァージャーはかつてレクターの患者だったが、全身に深い傷を負わされていた。レクターはフィレンツェで偽名を使いダンテ研究者となっていたが、地元刑事のレナルドが気づき、単独で接近する。

羊たちの沈黙』から10年後に公開された続編で、劇中の時間軸も10年後になっている。タイトルからわかる通りレクターが主人公で、クラリスの出番は全体の3割くらいだ。

ただ殺すだけでなく、人肉を食いちぎったり、凄惨な殺し方をしたりするなど、およそ常人とはかけ離れた狂気に満ちたレクター。しかし、クラリスをはじめ何人かに対しては、追い込むことはしない。相手が誠実に自分に向き合ってくれていると、レクターが認めたときだ。そうした美学が、単なる殺人鬼との差別化になっている。

レクターは頭の回転が早く、常に相手の先を行く。特に、自らの命を狙う者に対しては敏感だ。ただ、本作の後半でヴァージャーに拘束されたとき、クラリスが来なければ助からなかった可能性がある。レクターには、彼女が必ず間に合うという確信があったのだろうか。

終盤は、更におぞましさが加速する。意識を麻痺させたグランドラーに痛烈な一撃を加え、それをやはり意識朦朧としているクラリスに見せつける。FBIが迫る中、逃げようとするレクターをなんとか取り押さえようとするクラリス。自身とレクターの手首に手錠をかけるも、レクターは自分の手首を切断して逃げのびてしまう。クラリスはかなり頑張ったが、それでもレクターには及ばない事実を突きつけられた瞬間だ。

キャストは、レクターはで、この人のキャリアを代表する役柄だろう。前作では狂気の一部が垣間見られる程度だったが、本作はほんとうに凄い。クラリスは、前作のからに交代している。もし、ジョディが本作でもクラリスを演じていたら、という想像もしてしまう。

ヴァージャーはだが、レクターに皮を剥がされたという設定で特殊メイクが施されていて、見てもほとんどわからなかった。グランドラーはレイ・リオッタで、『フィールド・オブ・ドリームス』のシューレス・ジョーのイメージがあったが、ココでは腹黒い役人を演じている。

監督はで、本作は『グラディエーター』で賞レースを独占した次の作品になるが、作風の振れ幅が大きすぎる。

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