バッファロー’66(1998年)
刑期を終えて出所したビリーは、両親に結婚していると嘘をつき、偶然すれ違った少女レイラを誘拐して実家に連れて行き、妻だと紹介する。ビリーが刑務所に入ることとなったのは、賭けていたアメフトの試合で負け、賭け金を持っていなかったがために胴元に仕向けられたためである。なので、試合でフィールドゴールを外した選手を逆恨みしていて、その男を殺して自分も死のうとする。
レイラを誘拐して実家に連れて行ったのは、ビリーが覚悟を秘めていて実行前に両親に今一度会っておこうと思ったからなのだが、映画を見ている時点ではそうした悲壮感というのは伝わってはこず、正直訳がわからなかった。そして両親はビリーに関心がなく、ぎくしゃくした雰囲気をレイラが気遣うという具合に。
当時、劇場公開予告CMなどでさんざん流れていたイエスの『Heart Of The Sunrise』は、劇中ではビリーが男を殺そうとするクライマックスで流れ(結局未遂に終わる)、また途中ではキング・クリムゾンの『Moonchild』も流れている。タイトルは、ニューヨーク州バッファローで1966年に生まれた、ビリーのことを指しているようだ。
ビリーは、画家やミュージシャンとしても活動しているヴィンセント・ギャロ。主演のほか、監督も務めている。レイラはクリスティーナ・リッチで、全体に退廃的な雰囲気が漂う中、彼女の存在が救いになっている。ビリーの母がアンジェリカ・ヒューストンで、つまり『アダムス・ファミリー』シリーズのウェンズデーとモーティシアを演じていた人が、異なる関係性で再共演している。
ヴィンセント・ギャロは2003年のフジロックに出演していて、少しだけ観たことがある。キーボードやメロトロンの静かて淡々とした音色が、日中のグリーンステージには不似合いと感じ、もっと狭いステージにエントリーさせればよかったのに、と思った記憶がある。
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