となりのトトロ(1988年)
昭和30年代の日本。サツキとメイは、父に連れられ入院中の母の近くの農村に引っ越してくる。引っ越し先の古い一軒家でふたりはマックロクロスケを見つけたり、メイが塚森の穴に落ちたときに不思議な生き物に遭遇したりする。生き物の発した声がメイには「トトロ」に聞こえ、サツキにもそのことを話す。
ある雨の日、傘を持たずに仕事に出かけた父を迎えに、ふたりは最寄りのバス停へ。すると、そこへ大トトロがやってきてふたりの隣に並ぶ。ずぶ濡れの大トトロにサツキが傘を渡すと、大トトロはお礼に木の実を渡し、ネコバスに乗って去っていく。ふたりは木の実を庭にまき、満月の夜にトトロたちが木の実のまわりを歩いていて、ふたりもそれに加わる。
個人的に観たことのあるジブリ作品は半分弱程度だが、その中では本作が最高傑作だと思う。宮崎駿作品だと、時系列では『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』に続くが、もっとさかのぼれば『ルパン三世 カリオストロの城』『未来少年コナン』『アルプスの少女ハイジ』からの系譜と見ることもできる。
『トトロ』以前の作品はだいたい海外が舞台で、ロケハンを徹底する制作姿勢は既に伝わっていた。美しい景観のリアルな描写は、それだけで観客の心を震わせる大きな武器になっていた。ところが、『トトロ』は戦後の日本の田舎という、物語を膨らませるのには不向きと思われる舞台が選ばれていた。にもかかわらず、こどもだけにしか見えない生物、それを理解し受け入れる大人と、世代や男女、国を問わず、観る側の心に沁みる作品に仕上がった。
しかし、公開当時は興行的にはさっぱりだったそうだ。ただ、当時から評価は高く、アニメ雑誌の年間ランキングでは軒並みトップだった。1988年は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』が公開されていたが、アムロとシャアの決着戦にもかかわらず評価はさほどでもなく、『トトロ』はどれだけすごい作品なのかと思っていた。現在は、どちらも揺るぎない傑作として君臨している。
キャストは、サツキに日高のり子、メイに坂本千夏。日高は、時期的に『タッチ』の朝倉南の少し後くらいになるだろうか。坂本は、『キャッツ・アイ』で三女の愛役で覚えていた。父が糸井重里で、恐らく声優初挑戦。当時かなり話題になっていた。母が島本須美で、ナウシカやクラリスと、宮崎アニメには欠かせない印象のある人だ。本作では脇を固めるポジションで、こういう配役もアリと思わせてくれる。
以前、六本木ヒルズで開催されたジブリ展や、三鷹の森ジブリ美術館に行ったことがあった。どちらにもネコバスがあって、三鷹の方はこども限定、六本木ヒルズの方は大人でも入ることができたのを思い出す。
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