マッドマックス フュリオサ(ラストまで言及につきネタバレ注意)
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最終更新日:2024/06/10
マッドマックス クリス・ヘムズワース
緑の地に住む少女フュリオサは、暴走バイカー集団に拉致されてしまう。母親が必死になって彼女を取り戻そうとするも、捕らえられてしまい、リーダーのディメンタスによって拷問された挙げ句、無惨に殺されてしまう。フュリオサは口を利くのをやめてしまい、ディメンタスは彼女を手元に置く。
ディメンタスは製油所を襲って乗っ取ると、イモータン・ジョーに交渉を持ちかける。イモータンはフュリオサを引き渡すことを条件にし、彼女はディメンタスは母を殺した男だと口を開くと、引き取られることを選ぶ。ある夜、イモータンの息子リクタスに襲われそうになったフュリオサは、逃げ出し髪を切り少年の身なりになって、警護隊に加わる。
2015年に公開された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の前日譚に当たり、女戦士フュリオサが如何にして誕生したかを描いている。『怒りのデス・ロード』は数日間の出来事だと思われるが、本作は劇中15年以上もの歳月が流れている。
ネガティブな感想を先に書くと、『怒りのデス・ロード』以上にCGが多用されているのが残念。砂漠や荒れ地といった自然を舞台にしているにも関わらず、作られた感が観てわかってしまう箇所がいくつもあった。
個人的にぐっときたポイントは、大きくふたつある。まずひとつ目は、リブート前の3部作、特に『マッドマックス2』を想起させる描写が、『怒りのデス・ロード』よりも増えたことだ。
ディメンテスが3台のバイクを直立で操るさまは、ヒューマンガスを彷彿とさせた。まるで要塞のような巨大な製油所は、『2』にもあった。
『怒りのデス・ロード』では、フュリオサたちが大型タンカートレーラーに乗って逃げるのを、ウォーボーイズを引き連れたイモータン・ジョーが追うという、シンプルな構図だった。本作はカーアクションのシーンが何度もあり、『2』のクライマックスシーンが繰り返される感覚だった。
ラス前でフュリオサが執拗にディメンテスを追い詰めるくだりには、簡単には手をくださない1作目終盤のマックスが少し頭をよぎった。
ふたつ目は、『怒りのデス・ロード』にどのようにつながっていくかが、随所に明示されていることだ。
フュリオサはディメンタスとカーチェイスするうち、幅寄せされて車両の間に左腕が挟まれてダメージを負ってしまった。行動を共にしていた警護隊のジャックと共に捕獲されてしまい、ジャックはバイクに引き摺り回されて絶命。その間、彼女は左腕を縛りつけられ吊るされていた。勝ち誇っていたディメンタスだったが、フュリオサは「自ら左腕を引き千切って」脱走していた。
彼女がどのようにして左腕を失うのかは、どこかで描かれると思っていた。実際は、なんとも壮絶だった。砂漠で倒れていたフュリオサはイモータン・ジョーの軍に拾われ、ディメンタスへの反撃に加わる。金属製の義手は、自ら製作して装着していた。
身売りされた直後、少女フュリオサはイモータン・ジョーの子を産まされる女性の部屋に通される。そして15年後の女戦士フュリオサは、彼女たちを放っておくはずもなく、5人の妻を連れて脱走を敢行。ここがラストシーンで、『怒りのデス・ロード』へとリンクする。ポストクレジットでは、まさに『怒りのデス・ロード』のシーンが断続的に使われていた。
フュリオサは、シャーリーズ・セロンからアニャ・テイラー=ジョイに交代している。本作でフュリオサは常に悲しみと怒りに満ちているが、アニャは体を張ったアクションだけでなく、口数が少ないながらその心理面をも表現していたと思う。
ディメンテスは、クリス・ヘムズワース。基本は暴君だが、時折繊細な面も見せ、深いことばをつぶやくこともある。バイカー集団を率い、イモータン・ジョーを倒さんとする強さを誇示したかと思えば、フュリオサからの狙撃に怯え部下を楯にして自らは生き延びようとする弱さも覗かせる。クリスは、肉体性だけでなく内面の演技もしていた。
ジャックはトム・バークという人、イモータン・ジョーはラッキー・ヒュームという人が演じている。ヒュー・キース・バーンは、2020年に亡くなっている。監督は、シリーズを手掛け続けているジョージ・ミラーだ。
左腕を犠牲にして逃走するフュリオサを、崖の上から望遠鏡で覗く男の姿があった。その傍らには、V8インターセプターが停車していた。また、劇中ナレーションが少しだけ流れるが、その中に「彼女が私に語った」ということばがあった。恐らく、ナレーションの主はあの男なのだと思う。
本作は、観るまでは『怒りのデス・ロード』のスピンオフにとどまる位置づけと思っていた。観終わった後としては、対等な2部作の関係にあり、そしてフュリオサこそが主人公なのだというのが、率直な所感だ。
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