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ジャンヌ・ダルク(1999年)

ジャンヌ・ダルク

フランスの田舎村に住む、少女ジャンヌ。敬虔なクリスチャンで、毎日のように教会に行っては告解していた。あるとき、教会帰りに草原に寝転んでいたジャンヌは超常現象のような不思議な感覚を覚え、気がつくと横に剣が置かれていた。その頃村は英国軍に襲撃され、ジャンヌの家族も殺されてしまう。

17歳になったジャンヌはシャルル7世を訪れ、自らを神の使いと名乗ってシャルルの即位を手伝いたいと申し出る。軍勢を与えられたジャンヌは、激しい戦いの末英国軍からオルレアンを奪還。シャルルは即位するが、ジャンヌの存在を疎ましく思うようになり、援軍を送らずジャンヌは奪還に失敗。彼女は徐々に孤立するようになり、やがて囚われの身となってしまう。

リュック・ベッソンが監督で、ジャンヌが神の使いであることには否定的な描き方だ。神の啓示は、単に彼女が見たいと思うものを見ただけとしている。

彼女がひとりだけのときに現れる、彼女が神と信じていた、時には少年、時にはキリストのような存在は、老年の男の姿になって彼女に問う。超常現象は、一時的な気候の乱れではなかったのか、剣は兵士が偶然捨てただけではなかったのか、神がお前を必要とする理由などあるのか、と。

彼女にとっての支えは、シャルルや共に戦った兵士たちではなかった。終盤で彼女を追い詰めるのは、不当な裁判以上に信仰が崩れることだった。自分が神の使いだという強い信念(あるいは思い込み)がなければ、ティーンエイジャーの女性が大胆な行動を起こすことはできなかったのではないだろうか。ジャンヌは、19歳で火刑にされている。

ジャンヌを、シャルルをジョン・マルコビッチ、シャルルの義母をフェイ・ダナウェイが演じている。ミラ・ジョヴォヴィッチは、本作の2年前に公開された『フィフス・エレメント』のリールーを思えば、演技力が飛躍的に向上。3年後からの『バイオハザード』シリーズでの、活躍を予感させる。

ジョン・マルコビッチは、権力者にもかかわらずいつも何かに怯えている役どころ。フェイ・ダナウェイは、観るのは『俺たちに明日はない』以来。32年の開きがあり、観てもその人とわからなかった。

ナポレオン以降のフランスの権力者は、みなジャンヌをリスペクトしているそうだ。

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