『プリンスと日本 4EVER IN MY LIFE』を読んだ
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最終更新日:2024/04/22
書籍 エリック・クラプトン, プリンス, ローリング・ストーンズ
プリンスに関する書籍はそこそこあるが、日本とのつながりに焦点を絞った書を読んだ。個人的に追体験できるところ、共感できるところ、驚かさせるところなどが多数あり、とても読み応えがあった。
日本のメディアでの取り上げられ方と、ワーナーパイオニア公認の日本のファンクラブ会長へのインタビューの並行からスタート。アルバムリリースの日米時差や、音楽雑誌での取り扱いについて、かなり細かく記されている。露出が加速されるようになったのは、やはり『Purple Rain』以降。個人的にも、ここからがリアルタイムになる。
ただ、日本にファンクラブがあり、活発に活動していたことは、この書を読むまで知らなかった。女性会員が多くを占め、手書きの会報を刊行したり、やがてはクラブイベントを開催したりするにまで至ったとのこと。インターネットがなく携帯電話が一般普及する前の時期、アナログパワーでやってのけていた彼らのエネルギーには恐れ入る。
続くのが、ワーナーで約7年プリンスを担当した佐藤淳のインタビュー。入社2年目の若さで任せてもらい、日本盤シングルのジャケットをプロデュースしたり、邦題を決めたりした人だ。『When Doves Cry』を『ビートに抱かれて』としたのも、この人。当時は洋楽の曲に奇抜な邦題をつけていた末期になると思われるが、「ホエン~」とカタカナ表記にするとダサくて売れないと考え、絞り出したそうだ。
プリンス以外にも、シーラ・Eやアポロニアといったプリンスファミリー、ヴァン・ヘイレンやエリック・クラプトンなどを担当し、彼らにかかるエピソードも披露されている。音楽雑誌やラジオ局に音源を渡して取り上げてもらうよう頼むなど、フットワークの軽さと努力の熱量が凄まじい。今ならネット上でリスナーがダイレクトに音や映像を享受できるが(その状況をありがたく思ってもいるが)、当時はマスメディア側から受け取る情報が第一だった。
プリンスは通算6回来日公演を行っているが、そのエピソードもいろいろと確認できる。ワタシが知らず、かつ興味を持ったのは、96年1月の来日時にマイテが日本のベリーダンサーと邂逅していたことだ。一般のファンでは到底ありえないことだが、スペシャリストの人であれば軽く国境を越えて交流できるのだと思った。
2002年の仙台公演、客をステージに上げて踊らせるパートがあって、男性が志村けんの変なオジサンの踊りをしたことがあり、同じくステージでその人に合わせて踊った女性のインタビューが掲載されていた。プリンスも変なオジサンダンスをしたのだが、ワタシもその場にいて目撃していた。プリンスは、一瞬なんだその踊りは!?という表情をしたそうだ。
後半は、著名人へのインタビューが掲載されている。安齋肇は、テレビではおちゃらけていることが多いが、ここでは真面目に受け答えしていた。前述の仙台公演では、最前列のど真ん中に陣取っていたそうで、いちファンとしてのひたむきな姿勢が感じられた。スガシカオは90年代以降の作品にも言及し、好感が持てた。松尾潔は、グラムスラム横浜のオープンにも携わったそうだ。
久保田利伸は、ペイズリー・パークスタジオでレコーディングしたことがあり、スーザン・ロジャースとも一緒に仕事したとのこと。小比類巻かほるは、唯一プリンスに曲提供を受けた日本のアーティストだ、シーラ・Eと親しかったこともあり、最もプリンスに近づいたひとりだ。彼女のMV『Dreamer』には、後のダイアモンドとパールがコーラス役で出演しているそうだ。
最後を飾るのは、デビュー前からのプリンスを知り、90年までバンドのキーボード奏者を務めたDr.フィンクだ。81年にローリング・ストーンズ前座を務めたときも共にステージに立ち、またザ・レボリューション解散の真相についても語ってくれた。自身がプリンスから離れることになったのは、ヌードツアー終了後にスケジュールが空き、レーベルからソロアルバム契約の話をもらったからだった。
個人的には、初来日の86年以外のすべての来日公演に足を運び、計11回ライヴを観た。最後の来日から20年以上経ってしまったが、あの素晴らしい体験は、ワタシの中にこれからも残り続けるだろう。
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