西寺郷太『プリンス論』
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最終更新日:2024/04/22
書籍 デヴィッド・ボウイ, プリンス, ベック, ローリング・ストーンズ
ノーナ・リーヴスのシンガー、西寺郷太。この人が、出版社に依頼されて執筆したという『プリンス論』を読んだ。
プリンスの生い立ちから始まり、アーティストとしての活動がかなり細かく書かれている。そのキャリアは、必ずしも輝かしいことばかりではないが、通して読んでいくと、稀有な存在だったことを改めて思い知らされる。
『Controversy』の時期、ローリング・ストーンズのオープニングアクトを務めるも、客からブーイングを浴びせられて退場したこと。女性遍歴は多岐にわたり、ウェンディ・メルヴォワンの双子の姉妹とも交際していたこと。『パープル・レイン』以外の映画は、興行的に失敗し酷評されたこと。
一時はワーナーの副社長にまで上り詰めるものの、経営陣交代後は不仲となり改名騒動を起こしたこと。『Emansipation』は自身の結婚がテーマだが、プロモ来日時は幸せオーラ全開ながら、実は生まれたばかりの子が亡くなっていたこと。ラリー・グラハムの影響もあり、エホバの証人に入信したこと(その後脱会したようだ)。
最も文量が多く、そして密度が濃いのは、やはり『Purple rain』を中心とする80年代半ばだ。単に事実を並べ立てるだけでなく、それまで多用していたファルセットを控え目にした、BPMを極端に上げた、といったテクニカルな面での解説があり、プリンスが如何にしてスターダムにのし上がることができたの裏付けが、音楽をしていない人にもわかりやすく示されていた。
『We Are The World』のレコーディングに現れなかった件は当時から話題になっていたが、ライオネル・リッチーに直接インタビューした際に細かく聞き、実態に近づいたようだ(君は僕よりも詳しいねと言わしめたそうだ)。もちろん真相は判らないが、背が低いためほかのアーティストと並んで収録することを嫌い、ひとりだけのブースでならという条件を出したが、通らなかったのが理由ではとされている。
96年の来日公演を武道館のグッドシートで観たことや、同年代の向井秀徳と一緒にアルバムを聴いたというエピソードは、完全にファン目線だ。しかし、同じファンの身としては、わかるわかるという気になる(笑)。
西寺にとってはプリンス、マイケル・ジャクソン、ジョージ・マイケルが影響を受けた3大アーティストだそう。個人的にはその3者を並べて考えることはなかったので、新鮮だった。マイケルとプリンスに交流があったという話は聞いたことがなく、ふたりは結構仲がよかったという話ははじめて知った。
ワタシは、イノベーティブなアーティストとして、前の世代のデヴィッド・ボウイ、後の世代のベックと一緒に考えることが多かった。2015年のグラミー授賞式で、プレゼンターのプリンスと受賞者のベックの邂逅には、運命的なものを感じていた。
この書籍は2015年9月に出版され、電子書籍版は翌2016年3月に発売されたとのこと。プリンスが亡くなったのは2016年4月で、結果的にではあるが生前の活動をほぼほぼ集約した格好になる。
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