プリンス(Prince & The New Power Generation)『Diamonds And Pearls(Super Deluxe Edition)』
プリンスのアーカイヴシリーズとして、2023年秋に『Diamonds And Pearls』がリリース。オリジナルは、1991年10月にリリースされている。ワタシが入手したのは、CD7枚およびブルーレイのスーパーデラックスエディションで、総収録時間10時間以上という、とてつもないヴォリュームだ。
ディスク1はオリジナル盤のリマスター、ディスク2はシングルおよびカップリング曲の別ミックスや別バージョンなどを収録している。
ディスク3~5の3枚は、秘蔵音源集だ。一部はアルバム収録曲の初期バージョンや別ミックスだが、大半は完全未発表音源になる。『Crystal Ball』にもひけを取らないクオリティだが、物量的に当時はリリースできなかったのだろう。今回世に出ることができて、よかったと思う。
『Strollin'』『Willing And Able』『Money Don't Matter 2 Night』が、90年の来日公演時に東京のワーナースタジオでレコーディングされたのは、リリース時に情報としてオープンにされていた。そして、『Daddy Pop』『Walk Don't Walk』はロンドンで、『Insatiable』はロサンゼルスで、レコーディングされている。
自身のスタジオ「ペイズリー・パーク」設立後、プリントはそこでレコーディングすることがほとんどだったそうだ。しかし、本作の時期だけは上記の各地でレコーディングされていて、これは珍しいとのこと。ディスク3の『Lauriann』『Darkside』は東京で、同じくディスク3のうち4曲はロンドン、ディスク3とディスク5の中の1曲はロスで、それぞれレコーディングされている。
ディスク6と7は、1992年1月11日にミネアポリスで自身が経営するクラブ「グラムスラム」で行われたライヴだ。ブックレットによると、プリンスが当日に急遽ライヴ実施を決め、スタッフに録音と撮影を指示したとのこと。ライヴは、『Diamonds And Pearls』からの曲を軸にしつつ、後に『(LoveSymbols)』に収録される『The Sacrifice of Victor』『Sexy M.F.』も演奏されている。
ブルーレイには、上記のライヴ映像がフル収録されている。画面は全体的に暗めで、ほとんどがステージを捉えたショットになっている。音源では気づくのが難しく、映像で観てこそというシーンも多い。オープニングのダンサーはマイテ、『Daddy Pop』でのプリンスの激しいダンス、終盤でステージを離れてバーカウンターで歌うプリンス、深夜営業が州の条例に抵触するとかで、警察官が侵入してくる、などだ。
そのほか、ブルーレイには当時VHSで流通していた『Diamonds And Pearls Video Collection』を収録。そして、1991年7月にミネアポリスのメトロドームで開催されたスペシャルオリンピックのセレモニーパフォーマンスが、リハーサルを含めて収められているのが貴重だ。リハでもプリンスはきちっとした衣装で登場し、段取りを確認。演奏したのは『Diamonds And Pearls』と、イントロのみ『Let's Go Crazy』からの『Baby I'm A Star』『Push』のメドレーだった。
ブックレットには、当時のプリンスの写真や手書きの歌詞などが掲載。ヌードツアーでは長髪にしていて、その後は髪型を変えているが、双方とも確認できる。ライナーノーツは、パブリック・エネミーのチャックDを導入とし、新バンド「ニュー・パワー・ジェネレーション」メンバーたちのコメントを読むことができる。バンドのキープレイヤーであろうロージー・ゲインズは、自分はバックコーラスに収まるつもりはないと言い、プリンスは彼女を認め、受け入れた。
プリンスの評価は80年代に集中しているが、個人的には90年代も、もちろんそれ以降も、クオリティは全く劣っていないと思っている。今回のようなボックスは大歓迎だし、今後も90年代以降の未発表の音源や映像が世に出ることを期待している。
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