映画アイアンクロー(ネタバレ注意)
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最終更新日:2024/04/23
プロレス
元プロレスラーのフリッツ・フォン・エリックは、息子の次男ケビン、三男デビッド、四男ケリーを鍛え、プロレスラーとしてデビューさせる。兄弟は、フリッツがプロモートする地元テキサスを拠点に活動して、力をつける。デビッドにNWA世界ヘビー級タイトル挑戦のチャンスがめぐってくるが、日本遠征中に急死してしまう。
ケリーがNWA王座に挑戦しタイトルを奪取するも、バイク事故で右足下部を失ってしまう。五男マイクもデビューするが、試合中の肩の負傷が原因で後遺症に悩まされ、やがて服毒自殺してしまう。そして、義足をつけて一時はリングに復帰したケリーも、拳銃で自ら命を絶ってしまった。
呪われた一家という、ありがたくないフレーズがついてしまったフォン・エリック一家を描いた作品になる。劇中では、父フリッツと4人の息子を、次男ケビンを軸にして描写している。長男は幼少時に事故死していて、そして、現実では六男クリスもプロレスラーで、21歳で自殺している。しかしクリスはまるで描かれず、存在自体がなかったことになっている。4人と年齢が離れていることや、尺の関係と思われる。
劇中、兄弟はとにかく仲がよく、互いに支え合い、励まし合っている。学生のマイクのバンドのライヴに母が反対するも、夜に窓から抜け出し4人で車に飛び乗って会場に向かうシーンは、親の目を盗んで兄弟だけが共有するノリが感じられる。ケビンの結婚式で、4人とケビンの妻パムの5人が横一列になってダンスするシーンは、幸せの絶頂だ。
それだけに、その後次々に起こる悲劇には、既にわかっていることなのにやりきれない気持ちにさせられる。ケリーが亡くなった後、ボートで川を進むケリー。何のシーン?と思ったが、岸にはデビッドとマイク、そして幼い長男が待っていて、向こう側の世界なのだとわかる。
デビッドが日本で亡くなったことや、ケリーがNWAチャンピオンとして全日本プロレスに来日したこと、ケビンとケリーが新日本プロレスに参戦したことは、まさにテレビでリアルタイムで観ていた。マイクも、自殺する数ヶ月前に新日のリングにあがっていたそうだ。
キャストは、ワタシがわかったのはケビンのザック・エフロン、パムのリリー・ジェームズくらい。ザック・エフロンは胸板が分厚く腹筋が割れ、役のための体作りがハンパない。弟たちの面倒見がよく、自身は肉体や精神を病むことがなかったという性格俳優面の演技も光っていた。パムは獣医をしながら子育てもしケビンを支える役どころで、男性キャストが多い中、リリーは好演していたと思う。
プロレスの試合のシーンも多いので、そこそこ似た人がレスラー役として多数出演している。ブルーザー・ブロディ、フリーバーズのテリー・ゴディとマイケル・ヘイズ、ハーリー・レイス、リック・フレアーなどだ。また、テレビ画面に試合の映像が映るシーンが2度あったが、本物の映像が使われていたと思う。
ラストはケビンが幼いふたりの息子の相手をして游ぶシーンだが、このふたりは成人後プロレスラーになり、2012年に日本のプロレスリング・ノアに入団している。この事実を知っていて観ると、感慨深いものがある。そして、エンドロール前には4人の息子と11人の孫に囲まれた実際のケビンの家族写真が紹介される。ケビンとパムとは結婚40年を迎え、現在も暮らしているそうだ。
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