夢の涯てまでも:ディレクターズカット版(1991年/2019年)
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最終更新日:2024/03/13
ヴィム・ヴェンダース U2, エルヴィス・コステロ, トーキング・ヘッズ, パリ, マーベル, ルー・リード
1999年。インドの核衛星が制御不能になり、地球に墜落する危機に瀕していたが、多くの人々はそれを気にかけず生活していた。ヴェニスの友人宅から車を走らせるクレアは、道中で何者かに追われるトレヴァーという男と知り合い、彼を追いかけて世界中を駆け巡る。
クレアは東京でトレヴァーことサムに追いつき、ふたりはオーストラリアへ。そこは彼の両親がアボリジニたちと暮らす集落だった。サムの父は、盲目の妻のために映像を信号として脳に送信し彼女に映像を見せるための研究をしていた。サムは、母に見せるための映像を撮影するために世界中を旅していた。
1991年の劇場公開時は約3時間で、この時点で既に大作だ。しかし、監督のヴィム・ヴェンダースはダイジェスト版にさせられたと不満を漏らし、2019年に4時間48分のディレクターズカット版をブルーレイとしてリリース。ワタシは初回版未見で、つまり追加映像がどこかを認識しない状態で超大作を観た。
物語は、大きくふたつのパートに分かれている。前半は世界中を巡るロードムーヴィー、後半はオーストラリアの研究室を舞台にしたサムと彼の家族、彼らに関わるクレア、そして彼女に巻き込まれてやってきた元恋人や探偵たちとのやりとりだ。
前半はテンポよく進み、時間の長さを感じることはなかった。ヴェニスから南仏、パリ、ベルリン、リスボン、モスクワ、東京、箱根、サンフランシスコを転々とする。東京では、新宿のカプセルホテルの従業員を竹中直人が演じていた。箱根では、目を病んだサムの治療をする老人が笠智衆だった(ヴィム・ヴェンダースは小津安二郎をリスペクトしているとのこと)。
しかし、後半は正直言ってダレた。サムの父による研究、その実験体になっていた母、協力していたアボリジニたち、コミュニティに加わり交流するクレアたち。これらをじっくり描写したかったと思われるが、よくわからなかった。結局、いったん観終わった後に巻き戻して観直すことで、少しだけわかってきた。
サムの母は実験の末亡くなってしまうが、サムの父は研究をやめなかった。外部の映像を人の脳に送ることができるということは、人が見る夢を外部に出力することも可能にした。サムもクレアも、自身の潜在意識の中にあった映像を観ることはできたが、端末の電池が切れるとともに終わりを告げる。前半が物理的な旅だとすれば、終盤は時間軸を超えた旅を指していたのではと思われる。
1991年から1999年を描写しているので、部分的にだが近未来の技術を垣間見ることができる。公衆電話がモダンなデザインのテレビ電話になっていたり、小型ブラウン管のカーナビが双方向に会話可能になっていたりしていた。ヴェンダースには未来的表現のイメージがなかったので、少し新鮮だった。
キャストは、トレヴァーことサムにウィリアム・ハート、クレアはソルヴェーグ・ドマルタン、クレアの元恋人で語り部を担っているユージーンにサム・ニール、サムの母がジャンヌ・モロー、サムの姉エルザがロイス・チャイルズ。ソルヴェーグ・ドマルタンは『ベルリン・天使の詩』でもヒロインだったが、2007年に45歳の若さで亡くなっている。
ウィリアム・ハートは『A.I.』の博士役や『バンテージ・ポイント』の大統領役で観ている。マーベル・シネマティック・ユニバースでは、アメリカ国務長官サディアス・ロスとして『インクレディブル・ハルク』複数の作品に出演しているが、ヒゲのありなしでイメージが一致しなかった。この人も、2022年に71歳で亡くなっている。
u2が書き下ろし曲を提供し、エンドロール時のほか、劇中にも何度か流れる。トーキング・ヘッズやルー・リード、ニック・ケイヴ、デペッシュ・モード、エルヴィス・コステロ、R.E.M.らも曲提供していて、サントラはかなり豪華だ。
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