*

落下の解剖学(少しネタバレ)

公開日: : 最終更新日:2024/04/21 サスペンス

落下の解剖学(ネタバレ注意)

雪深いフランスの山荘で、作家の男が転落死する。妻で同じく作家のサンドラが、殺人容疑で逮捕される。法廷で検察官は厳しく追及し、サンドラは友人の弁護士をたてて無罪を勝ち取らんとする。

息子のダニエルが夫の注意不足で弱視になってしまったこと、夫が精神安定剤を服用していたこと、サンドラがバイセクシャルであること、不倫していたことなどが明かされる。夫は創作活動のためのアイディア用に家庭内で録音していて、死の前日の生々しい大ゲンカの音声も録音されていた。

2023年に公開されたフランス映画で、カンヌ映画祭でパルムドール賞を受賞。アカデミー賞にも、作品賞をはじめ複数の部門にノミネートされている。

最大の見どころは、生々しい夫婦ゲンカのシーンだろう。劇中の法廷では音声が流れていることになっているが、ワタシたち観客は映像として見せられている。互いに罵り合い、妥結点は到底見い出せそうにない。

作家としてはサンドラの方が成功しているが、夫はダニエルの面倒見をはじめ家事は自分がやっているからサンドラは作家業に打ち込めていると主張。一方のサンドラは、フランスに移住しようと言い出したのは夫で、自分は妨げずについてきたのに、うまくいかなくなったらこっちのせいにするのかと主張。ドロ沼状態だ(ココに書いたのはほんの一部で、劇中は更に凄まじい)。

さて、個人的な所感としては、想定内の展開に収まってしまった。判決が出た後にもうひと山あるにちがいないと思って観ていたのだが、そのまますんなりと終了。うーん。強いて言えば、ラストでダニエルがサンドラに言ったことばが「匂わせ」なのかも。

邦題の「解剖学」とは、医学的な意味ではなく、法廷内外でのやり取りをさしている。原題は「Anatomie d’une chute」で、直訳すると「転倒の解剖学」。極端に意訳したわけではなかったようだ。また、ダニエルを保護する女性マージが、観終わった後に調べたところ、なんとサヴェージズのジェニー・ベスだった。

関連記事

レミニセンス(ネタバレあり)

レミニセンス(ネタバレあり)

近未来のマイアミは、戦争と海面上昇によって街の一部が水没。退役軍人のニックは、戦時中の尋問装

記事を読む

ウインド・リバー(ネタバレあり)

ウインド・リバー(ネタバレあり)

アメリカ北部の冬場は雪に覆われた極寒の地、ワイオミング州のウインド・リバー地区。野生生物局の

記事を読む

ナイトクローラー(ネタバレあり)

ナイトクローラー(ネタバレあり)

鉄を盗んで売っているルー。あるとき自動車事故に出くわすが、現場を撮影するカメラマンを見て触発

記事を読む

推理作家ポー 最期の5日間(2012年)

推理小説を書かなくなったエドガー・アラン・ポーは評判を落とし、酒代もなく店から叩き出される始

記事を読む

オデッサ・ファイル(1974年)

1960年代の、西ドイツのハンブルグ。フリーライターのミラーは、自殺した老人の日記を偶然入手

記事を読む

  • 全て開く | 全て閉じる
PAGE TOP ↑