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『スタンリー・キューブリック(シリーズ 映画の巨人たち)』を読んだ

『スタンリー・キューブリック(シリーズ 映画の巨人たち)』を読んだ

映画監督の、人物像や作品世界について書かれた書籍を読んだ。

キューブリックはニューヨークの比較的裕福な家庭に育ち、13歳のときに父親からプレゼントされたカメラに夢中になる。このとき、ほぼ人生が決定づけられた。大学を中退すると、雑誌のカメラマンとして働きつつ、やがて映画の世界へ。ドキュメンタリーを数本手掛けた後に、戦争やサスペンスを題材とした作品をいくつか発表。メジャーに進出したのは『スパルタカス』からだ。

作品への考察は、『博士の異常な愛情』にかかるものが最も多い。ブラックコメディーであること、日の目を見なかった別のエンディングがあること(会議をしている面々でのパイ投げ)、完璧主義のキューブリックには珍しく、主演のピーター・セラーズに好きなようにさせていることなどが挙げられている。

次いで多かったのは、『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』『シャイニング』。この辺りは妥当に思った。キューブリックが関わっていない続編『2010年』『ドクター・スリープ』にも、いちおう触れられている。大作だがキューブリック自身は思うようにできなかったという『スパルタカス』、個人的に未見の『ロリータ』にも、もっと触れてほしかった。

テーマを決めて作品を横断した考察もあった。近未来のSFながら電子音楽を使わずクラシックを適用した『2001年宇宙の旅』、当時としては最先端の機器アナログシンセサイザーを使った『時計じかけのオレンジ』と、音楽に着目し映像との見事なシンクロを指摘。ただ、『時計じかけ』に関しては主人公アレックスの好きな音楽がベートーヴェンであることの指摘も忘れていない。

建築に着目した考察で、『シャイニング』では舞台のホテル自体が重要であることを指摘していたのには同感。筆者は2019年にデザインミュージアムで開催されたキューブリック展に足を運んでいて、そのときの写真も併せて掲載されていた。ワタシも、ロンドンに旅行したときにタイミングよくこの展示を観ることができたので、そのときに大きな感銘を受けたことを思い出した。

マニアックなところでは、『アイズ・ワイド・シャット』での部屋に飾られていた絵は『時計じかけのオレンジ』で作家の家に飾られていた絵と同じという指摘。そして、キューブリックの奥方は画家だそうだ。また、監督で公開した『A.I.』も、脚本はキューブリックが執筆していたことから、ここでは作品一覧に紹介されている。

この書籍、「シリーズ 映画の巨人たち」となっていて、ほかにはを扱った書が刊行されている。こちらも気になるのと、今後ほかの監督や俳優の書が刊行されることも期待している。

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