Ryuichi Sakamoto CODA
坂本龍一のドキュメンタリー映画を観た。
311の東日本大震災の現地を訪れる場面から始まり、防護服を着てタブレットで映像を撮影する坂本。震災の中、汚れて傷みはしたが生き残ったピアノを手入れして弾けるように復元させると、再び現地を訪れて戦メリを弾く。原発再稼働反対デモにも参加し、活動の域は音楽だけにとどまっていない。
2010年代以降の映像が大半だが、ymoでの若い頃の坂本も捉えられている。『戦メリ』で俳優と映画音楽の世界に足を踏み入れ、『ラスト・エンペラー』『シェルタリング・スカイ』のときの制作の裏側も明かされる。
2014年に最初のガンとなり、数種類の薬を苦い顔をしながら飲んでいた。その時期は活動休止状態にしたかったが、好きな監督というアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥのオファーはどうしても断れなかったとのことで、『レヴェナント: 蘇えりし者』のサントラを手掛けていた。
坂本は自然や日常の中の音を録音していて、それはテレビの追悼特番などでも観て知っていた。本作内でもその様子が伺え、自宅スタジオでMacを使い編集している姿があった。『惑星ソラリス』の一場面が何度か流れていて、坂本が影響を受け、意識した音楽だったのだろう。
坂本が存命中に制作・公開されたこともあってか、坂本ゆかりの人が登場して称えることもなく、坂本のキャリアも網羅してはいない。社会派活動は地雷ZEROやNO NUKESもあったが、触れられてはいない。ソロ活動もほぼノータッチで、『Energy Frow』がインストながらチャート首位に輝いたこともスルー。
ナレーションも、坂本自身だ。恐らく監督をはじめスタッフは、坂本の意向を全面的に尊重して制作を進めたのではないだろうか。坂本が亡くなった後になって観ると、遺書のように見える一方、この人が成したことが世の中に生き続けているようにも思え、今でもワタシたちに寄り添ってくれているように感じてしまう。
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