松本零士『ザ・コクピット』
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松本零士 クリストファー・ノーラン
映画『わが青春のアルカディア』を公開時に劇場で観たことをきっかけに、『戦場まんがシリーズ』の単行本をいくつか購入して読んだことがあった。現在は、『ザ・コクピット』というタイトルでまとまっていることを知り、読んでみた。
『ザ・コクピット』は、『戦場まんがシリーズ』に加え、『ザ・コクピット』『ハードメタルシリーズ』『ブルーメタルシリーズ』『ケースハードシリーズ』と変えながら、30年近く続いたそうだ(松本零士のエッセイより)。一話完結で、つながりを持つ話はほとんどない。強いて挙げれば、『スタンレーの魔女』と『わが青春のアルカディア』くらいだろうか。短編集なのだが総数は115話になり、ものすごい物量だ。
指揮官レベルの人物は、まず登場しない。描かれるのは、階級が高くない、現場の最前線で戦う兵士たちがほとんどだ。戦闘機のパイロットや機銃を扱う歩兵たちが多く、少ないが戦車乗りを主人公とした話もあった。日本兵が最も多く、ドイツ兵が続いた。
彼らは、決して戦いたくて戦ってはいない。抗えない運命の中、死と隣り合わせの中(実際、各話主人公の多くは戦死している)、心を燃やすかのごとく、懸命に生き抜いた男たちの熱いエネルギーが感じられる。もし戦争がなかったら、自分はこういうことをやりたかった、という夢を語る者もいた。
劇中の時間軸は、ほとんどが第二次大戦中だ。しかし、いくつかの話では戦争を生き延びた者が現代で当時を振り返っていたり、あるいはもっと未来から戦時中にタイムスリップして歴史に介入したりした者もいた。男性キャラの出演が大半で、女性は主に恋人として登場。それが、『ハードメタルシリーズ』以降はの女性のパイロットや狙撃手も描かれるようになっていた。
ドイツのメッサーシュミットやフォッケウルフ、イギリスのスピットファイアといった戦闘機は、このシリーズを読んで知った。クリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』での空中戦を観たときは、本作のことを思い出した。
新谷かおるが松本零士のアシスタントをしていたと知ったのは、松本零士が亡くなった後だった。時期は1973年3月から2年半とのことで、『ザ・コクピット』では、単純に考えると1巻途中から3巻途中くらいまでに該当する。新谷の代表作『エリア88』での凄まじいまでの戦闘機の描写は、このアシスタント時代に培われたのかもしれない。
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