メイキング・オブ・モータウン(2020年)
音楽レーベル「モータウン・レコード」の、ドキュメンタリーを観た。創始者ベリー・ゴーディが、はじめて自身への密着取材を許可したとのことだ。
デトロイトに生まれ育ったベリーは、レコード店を営むも倒産。続いて自動車工場で働き、1台のクルマが出来上がるまでにさまざまな工程があることを覚え、これが後の経営ノウハウとして生きてくる。やがてジャッキー・ウィルソンへの曲提供をきっかけに音楽ビジネスに進出し、一軒家を借りてレーベルをスタートさせる。
社長のベリーと、彼の盟友で副社長も務めたスモーキー・ロビンソンのインタビューを軸に進行。黒人アーティストを中心に発掘し、育て、発信し続けた。作詞作曲ができるベリーに、自身もアーティストとして活動するスモーキー。単なる経営者ではなく、音楽を出自とするふたりが担うレーベルとは、なんとも恐れ入る。
個人的にソウル/ブラックミュージックはあまり聴いていないので、出て来るアーティストたちの大半はわからないのではと思っていた。しかし、マーヴィン・ゲイ、スティーヴィー・ワンダー、テンプテーションズ、スプリームス(ダイアナ・ロスが在籍)、マーサ・アンド・ヴァンデラス、ジャクソン5など、知っている人たちが多かった。
当時の映像と、この作品のために取られたインタビューが相俟って、よりリアリティを帯びてくる。テンプテーションズ『My Girl』が誕生したいきさつ、ベリーとダイアナ・ロスとの曲をめぐる対立(後にふたりは結婚する)など、興味深いエピソードがいくつも出て来る。
11歳で契約しデビューしたスティーヴィー・ワンダーは、ベリーとスモーキーには天才と称されたが、自身は当時を振り返ってクソガキだったと言っていた。ジャクソン兄弟は、亡くなったマイケルを除く4人が揃ってコメントしていた。ニール・ヤングが一時期在籍していたのは、意外だった。
モータウンでは、曲のリリースを判定する会議がおこなわれ、名物になっていると聞いている。本作冒頭ではその音声が流れ、劇中でもそのことに触れられていた。スティーヴィー・ワンダーが、ジェフ・ベックのために書いた『Superstition』を自身の曲として先にリリースしてしまったのは、会議のプレッシャーもあったのではと、想像してしまう。
1972年、ベリーはレーベルの拠点をデトロイトからロサンゼルスに移す。「モータウン」は、自動車産業の都市デトロイトの愛称「モータータウン」の略称だそうだ。
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