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羊たちの沈黙(1991年)

羊たちの沈黙

カンザスシティをはじめ、全米各地で若い女性が殺害され皮を剥がされるという、猟奇的な事件が多発。犯人は、「バッファロー・ビル」と呼ばれていた。FBI訓練生のクラリス・スターリングは、上司の指示により、元精神科医で精神病院に収監中のレクター博士に捜査のヒントを聞こうと面談する。

レクターは、捜査に協力する見返りとして、クラリスに過去に苦しんだ体験を話させる。早くに両親を亡くした彼女は親戚に引き取られるが、そこでのある体験がトラウマになっていた。精神病院の院長チルトンは、新たに議員の娘が誘拐されたことで、議員にレクターを売り込んで功績をあげようとする。

キャストは、クラリスに、レクターに。ジョディ・フォスターは、本作の3年前に『告発の行方』に主演しアカデミーを獲得したこともあり、当時は彼女の目線で観た記憶がある。しかしながら、後にレクターをメインに据えた続編や前日譚が作られていることから、今ではレクター目線で観てしまう。

本筋は猟奇的事件の捜査のはずだが、実質的にはレクターとクラリスとの対話を経た、レクターの動向こそがメインだ。タイトルは、親戚宅でクラリスが羊たちが屠殺され、羊たちは抵抗も逃げもしないのを目撃してしまったという、クラリスのトラウマを指している。レクターは彼女に犯人のヒントを与える一方、チルトンには復讐心を持つ(最終的にどうなったかは描かれていない)。

まだ訓練生のクラリスをレクターにあたらせた上司は、酷なことをすると序盤では思った。しかし、レクターがそれまでほかの捜査官にはとり合ってこなかったことや、最終的に彼女がバッファロー・ビルを仕留めたことなどから、上司の判断は正しかったことになる。レクターは、純度が残り誠実に接してきた彼女を認めていた。

監督はジョナサン・デミで、本作のほかはの『Stop Making Sense』が代表作だ。サイコスリラーものでありながらアンダーグラウンドにとどまらず、より一般に近い形で流通させることができたのは、同時期のテレビシリーズ『ツイン・ピークス』と並んで大きな成果だと思う。以降、このジャンルの作品がこんにちまで数多く発表された。日本では、90年代半ばに浅野温子主演で放送された『沙粧妙子 最後の事件』が、その直系ではないかと思っている。

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