『高橋幸宏 多才なロマンティストの軌跡』を読んだ
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最終更新日:2024/04/13
高橋幸宏 METAFIVE, YMO, ロキシー・ミュージック, 高橋幸宏
去年3月に発売されたミュージックマガジンの増刊で、1月11日に亡くなった高橋幸宏の特集号を読んだ。前半が、データに強い姉妹誌のレコードコレクターズの記事、後半がインタビュー中心のミュージックマガジンの記事という、ユニークな構成になっていた。
ただ単に既出の記事をかき集めただけでなく、冒頭のレココレ2006年9月号・10月号の記事は文章はそのままに写真だけをカラーにするという対応がされていた。続くディスコグラフィーは、この書のために補完された、言わばオリジナルの記事だ。
幸宏の活動は、ソロだけにとどまっていない。ymoをはじめ、ビートニクス、pupa、そしてmetafiveと、まあ多岐に渡っている。本書ではこれらの活動もインタビューとディスコグラフィーでフォローし、読む側としては非常にありがたい。pupaでは権藤知彦と堀江博久と、METAFIVEでは6人全員で、ビートニクスは鈴木慶一との複数回に渡る、インタビューが掲載。もちろん、これらの中心にいるのは幸宏だ。
ミュージックマガジン2013年8月号記事では、アルバムをリリース順に掲載していて、ミカ・バンドから『Live Anew』までの、時系列での幸宏の活動を実感できる。特に80年代前半は1年でアルバムを3~4枚リリース。81年は、YMO『BGM』~ソロ『ニウロマンティック』~YMO『テクノデリック』~ビートニクス『出口主義』と、ライヴやコンピレーションを含まないオリジナルだけで4枚リリースしている。驚異的だ。
中盤では、70年代のサディスティック・ミカ・バンドが活動中の頃のインタビューがあり、メンバーとプロデューサーのクリス・トーマスとの対談がされていた。ミカ・バンドはイギリスでロキシー・ミュージックと共にツアーをおこない、そのつながりもあってクリスがプロデューサーすることになるが、ロキシーの名前も頻繁に登場した。
79年のディーヴォ来日時には幸宏がインタビュアーになり、鋤田正義が写真撮影という豪華な顔ぶれに。ビートニクス結成時の鈴木慶一との対談、上記のミカ・バンドのインタビューにはミカは不在だが、89年の再結成時インタビューには、桐島かれんもコメントしていた。
METAFIVEは、実質的に幸宏の最後の活動になり、個人的にも何度かライヴを観たこともあって、ある意味YMOに比肩するユニット活動として身にしみている。最初は幸宏とそのバックバンドだったのが、後に幸宏もバンドの一員という位置づけになり、6人で曲を書くようになった。
小山田圭吾、LEO今井、砂原良徳、テイ・トウワ、ゴンドウトモヒコ(ここではカタカナ表記)、そして幸宏と、それぞれに実力と実績のある面々だが、互いに打ち消し合うこともなく、バンドとして機能した。単発のプロジェクトで終わることなく、フェス出演や単独ツアーが実現したことも嬉しかった。
編集後記でも触れられているが、最後の記事となった2021年7月号のビートニクスのインタビューにおいて、幸宏は「今より1時間先の方が面白いものがあるはず」ということばが幸宏から発せられている。この名言、ワタシの人生にも活かさせていただく。
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