ジェフ・ベック(Jeff Beck)『Live At The Hollywood Bowl』
2016年8月、ジェフ・ベックがキャリア50周年を記念してラスベガスの野外会場ハリウッドボウルでライヴをおこなった。ライヴDVDがリリースされていて、ワタシはCD2枚組を含むパッケージを入手した(以下はDVDを中心に書く)。
ライヴは、公演のひと月前にリリースされたアルバム『Loud Hailer』からの『The Revolution Will Be Televised』でスタート。ロージー・ボーンズがスピーカーマイクで歌いながら、客席の間の通路を練り歩く。バンドは、ドラムにジョナサン・ジョセフ、ベースにロンダ・スミス、ギターにカーメン・ヴァンデンバーグ、そしてロージー。若い女性アーティストがふたり加わっていて、このメンバーで翌2017年1月に来日公演をおこなっている。
そして、ヤードバーズからジェフ・ベック・グループ、ソロ、と、ジェフのキャリアを総括するモードにシフト。ジミー・ホールがヴォーカルを担うが、『Beck's Bolero』『Morning Dew』などは、21世紀のジェフのライヴでもお馴染み。対して、ヤードバーズの『Over Under Sideways Down』『Heart Full Of Soul』『For Your Love』はとても新鮮。ジェフのプレイで、21世紀に見られるとは思わなかった。
ここで、70年代に盟友として活動を共にしたヤン・ハマーが登場。『Freeway Jam』『Cause We've Ended As Lovers』『Blue Wind』など、この人のソロキャリアのピークに当たるマストナンバーが、次々に繰り広げられる。『Star Cycle』でのジェフとヤンの掛け合いは、90年代後半以降のエレクトロ路線の先駆けにも思える。この曲は、かつて「ワールドプロレスリング」で次期シリーズに参戦する外国人レスラーを紹介するときに流れていて、ジェフの存在を知る前に聴いていた。
女性ブルースシンガーのベス・ハートを迎えての『I'd Rather Go Blind』、そして大御所バディ・ガイとの『Let Me Love You Baby』。この時期、ジェフとバディは一緒にツアーをしていたそうだ。この後はバンドのみで『Loud Hailer』からの2曲を、つまり、キャリアを総括しつつも懐古に終始はせず、この人が未だ現在進行形であることを知らしめる進行だ。
この後も、更に豪華ゲストが。ビリー・ギボンズが現れ、ZZトップの『Rough Boy』を共演。85年リリースの『Afterburner』収録で、もしかしてジェフはレコーディングに参加してる?と思い調べたが、情報を見つけることはできなかった。日本盤解説によると、ジェフが気に入っている曲とのこと。両者は、2014年から2015年にジョイントツアーをおこなっている。
そして、エアロスミスのスティーヴン・タイラーが登場し、『Train Kept A-Rollin'』『Shapes Of Things』を共演。前者はエアロのセカンドアルバム『Get Your Wings』に収録され、彼らのライヴでもお馴染みなので、納得。後者は少し意外だが、ジェフ・ベック・グループ時代のロッド・スチュワートのヴォーカルを思い浮かべながら観る楽しみ方もある。
お祭りモードを鎮めるように、ビートルズの『A Day In The Life』で本編を締め、そしてアンコールではプリンス『Purple Rain』のカヴァーを。ベス・ハートがリードヴォーカルを務め、ジミー・ホールとスティーヴン・タイラー、ロージーはコーラスにまわっている。プリンスはこの公演の4ヶ月前に亡くなっていて、ライヴでこの曲をカヴァーして追悼するアーティストは多かった。そして、ロンダ・スミスは一時期プリンスのバンドメンバーでもあった。
このとき、ジェフ・ベックは72歳。老け込みもせず、無理している感じもなく、老いを超越して現役感バリバリに見えた。それだけに、1年前のこの日に78歳で亡くなってしまったことが、残念でならない。しかし、この人のギターフレーズは永遠に人びとの中に生き続ける。そう信じている。
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