攻殻機動隊Stand Alone Complex The Laughing Man
全26話で放送された、『攻殻機動隊Stand Alone Complex』。1話完結の事件と並行して全編に渡って追い続けたのが「笑い男事件」で、この事件に絞って再編集された総集編が「The Laughing Man」だ。
笑い男事件は、電脳硬化症のワクチン認可に利権が絡んで真実が隠蔽され、それをネットで知ったアオイがセラノ社社長に真実の告白を迫るも失敗、その際に周囲の人物をハッキングしたときのマークから「笑い男」と称された。以降アオイは姿を消すが、模倣犯により誘拐や株価高騰などが引き起こされた。
公安9課のトグサは、事件を捜査していた元同僚の刑事から話を持ちかけられるも、その刑事は事故死。9課は厚生労働省の薬島が黒幕と睨むが、その証拠を立てるためセラノに語らせたアオイが草薙素子の変装であり、それが厚労省によって世間に出てしまう。荒巻は、9課解体と引き換えに薬島を確保する取引を総理とおこなう。
再編集のアプローチだが、前後の関係もあってか、冒頭には別の事件も組み込まれている。素子が笑い男らしき人物と接触する、電脳チャットがカットされたのは意外。描写の根底にあるのはサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』で、ここでは一層強調されている。素子の台詞もそうだし、施設でアオイが書いたとされる英文、そして終盤ではトグサがこの書を手にして暴走しかける。
終盤、素子やバトーが追い詰められるさまは、からくりも結末もわかっているとはいえ、緊張感にゾクゾクさせられる。兵器としては不適格とみなされたタチコマが、バトーを救うシーンも感動的。素子が、自らのアイデンティティーを確認するために持っていた腕時計をバトーが取りに行くくだりは、バトー自身にとっても大切で、譲れないことだったに違いない。
関連記事
-
GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0(2008年)
士郎正宗原作の『攻殻機動隊』が押井守監督で劇場公開されたのが、1995年の『GHOST IN
-
攻殻機動隊Stand Alone Complex
アニメ版攻殻機動隊の本流は映画『Ghost In The Shell 攻殻機動隊』なのだが、
-
『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』を観た
電脳や身体能力が驚異的に向上した、ポスト・ヒューマン。そのひとりであるミズカネスズカの襲撃を
-
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』をIMAXで観た
近未来。技術の発展によって、人間の脳から直接ネットワークに接続できる電脳化、および人体の義体
-
士郎正宗『攻殻機動隊』
押井守監督の『GHOST IN THE SHELL』『イノセンス』、神山健治監督の『Stan