ヨラテンゴ(Yo La Tengo)@ザ・ガーデンホール
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最終更新日:2023/11/08
Yo La Tengo フジロック, ヨラテンゴ
ほんとうはフジロック'23で観たかったヨラテンゴだが、タイムテーブルがヤー・ヤー・ヤーズと被ってしまった。そこへ単独来日の報があったので、フジではスルーしてこちらでどっぷり浸かることにした。当日の昼頃、X(旧Twitter)公式アカウントより、2部構成になることが告知された。
なんと、開演予定よりも前に客電が落ち、ステージ向かって左側の袖から3人が登場。アイラ・カプランは、走ってきた。最新作『This Stupid World』の冒頭曲『Sinatra Drive Breakdown』で、ライヴはスタート。そして、アイラのギタープレイが出だしから尋常ではない凄まじい緊張感を放っている。個人的に何度かヨラテンのライヴを観させてもらっているが、この人はいつも1曲目から勝負をかけてくる。
メンバー配置は、向かって右にアイラ、左やや後方にベースのジェームズ、中央後方にドラムのジョージア。ほぼ逆トライアングルのフォーメーションで、これもいつものこと。ワタシはジェームズ側に陣取っていたこともあるが、ベースとドラムがことのほかクリアに聴こえた。特にジョージアのスネアといいハイハットといい、リズムが的確であるだけでなく、ビートそのものがパワフルだった。
アイラは、ほぼ1曲毎にギターを交換。テレキャスターに始まり、エレアコ、ジャズマスター、ストラトキャスターと、まあ目まぐるしい。エフェクターの設定もあるのか、どれを使ってもディストーションが効いていて、このバンドのカラーを体現している。キーボードもこなしていて、そしてこれらは曲間を間延びさせることなく素早く交換されていた。
ジョージアがドラムセットを離れて前方に繰り出し、ドラムレス状態となってヴォーカルやキーボードにシフト。ゆったりとした空気感の中で2曲ほど演奏された。共に黒シャツ姿のジェームズとジョージアは、コーラスも担っている。ソフトなアプローチながらハーモニーが絶妙で、カヴァーもしているビーチ・ボーイズからの影響とリスペクトが伺えた。
『This Stupid World』を主体とした第1部を『Miles Away』で締めくくり、約15分のインターバルを経て第2部へ。『Fallout』から『From A Motel 6』となり、場内の熱気が一段上がった。更に『Stockholm Syndrome』と、キャリアを代表する曲が立て続けとなる。第1部は幾分おとなしめだな、じっくりめだなと思ったが、第2部にきて明らかにシフトチェンジしてきた。
その中心にいるのはやはりアイラで、ストラトキャスターを単に弾きまくるだけでなく、上から振り下ろすようにしたり、上体をくの字にしていたり、跪いて縦に構えたり、弦ではなくボディーを叩いて音を出したり、と暴れ放題。まさかしないだろうとは思ったが、ギターを叩きつけて壊してしまうのではないかと、少しヒヤヒヤした。
アイラはそれまで弾いていたストラトをアンプの上に乗せてノイズを発しつつ、ジャズマスターを手にして弾くという、ひとり二重奏状態をやっていた。表情を見る限り、ゾーンに入っていたのではと思った。トム・ヨークは、無意識に体が勝手に動いて演奏するのが理想的と言ったことがあって、それに近い状態になっていたのではなかっただろうか。
ラストは『Sugarcube』からの『Pass the Hatchet,I Think I'm Goodkind』と、怒涛の展開になった。アンコールでは、アイラがフロア最前の客からのリクエストに応え、そしてキンクスのカヴァーを(帰宅後に調べて『This Is Where I Belong』という曲だと知る)。オーラスは、ドゥーワップのカヴァーだったのではと思われる。
ヨラテンゴは80年代から活動していて、アイラは既に還暦を越えている。しかし3人とも以前と変わることなく、いや、表現力についてはより一層研ぎ澄まされ、かつ奥深くなっていると思われる。そう思わせてくれるライヴだった。フジロックで観たかったと冒頭に書いたが、結果的に単独を選んでよかったと思う。2部構成プラスアンコール、計2時間半パフォーマンスは、単独公演でこそなし得るものだからだ。
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