ミステリと言う勿れ劇場版(少しネタバレ)
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最終更新日:2023/10/29
邦画
広島の美術館を訪れていた久能整は、女子高生の狩集汐路に遺産相続問題の相談を持ちかけられる。汐路に久能を紹介したのは、犬堂我路だった。狩集家の当主が亡くなり、本来相続対象だった4人の子供は揃って8年前に事故死。汐路を含む、4人の孫が対象となっていた。遺書に書かれた条件は、4つの蔵の中にあるものをあるべき場所に移せという、謎めいたものだった。
4人は、当初は個別に蔵の中を調べていたが、おのおのが身の危険にさらされる。しかしそれは汐路の自作自演で、久能にやめるよう諭される。8年前の事故は、親4人が同乗する車での汐路の父の運転ミスによるもので、一族に責められた母のために、遺産を勝ち取ろうとしての行動だった。4人は協力して謎解きするよう、改めて意思をかためる。顧問弁護士の孫で弁護士見習いの車坂朝晴も、調査に加わる。
マンガ原作の実写化で、2022年1月期にフジテレビの月9枠で1クール放送されていた。個人的に、テレビドラマは年に1本観るか観ないかぐらいだが、この作品に関しては観ていた。劇場版の本作はその続編になり、犬堂我路の存在や久能との関係はテレビドラマの中で描かれている。そのほかは、本作単体でも楽しめる。
劇中で久能も言っていたが、遺産相続、複雑な家系、殺し合いの歴史といった要素は、『犬神家の一族』を彷彿とさせる。ただ決定的に異なるのは、以前には事故などはあったが、遺産相続にかかる謎解き以降は、誰ひとりとして死ななかったことだ。これも久能が序盤から4人に持ちかけていたことで、細部まで見逃さない注意力の高さや推理力の鋭さはさすがだと、素直に思ってしまった。
ただ、久能も完全無欠なわけでもなく、旅行中は風呂には入らない、洗濯物を第三者には預けない、天パーを気にしていて直毛の人を羨ましがるという、クセが強いキャラクターの大学生だ(そこにツッコミを入れるのが、依頼人でもある汐路)。また、久能を紹介した我路は当初自分で狩集家に関わろうとしていたが、もしそうしていたら、今回のとは全く別の、恐らくは誰かが死ぬ結末になっていたと思う。
キャストは、久能の菅田将暉、我路の永山瑛太は、もちろんテレビシリーズから続投。狩集家の4人は、町田啓太、萩原利久、柴咲コウ、汐路の原菜乃華。朝晴が松下洸平、汐路の父が滝藤賢一、母が鈴木保奈美、亡くなった当主のいとこが松坂慶子、朝晴の祖父の顧問弁護士が段田安則、顧問税理士が角野卓造。そのほか、春風亭昇太やダンディ坂野も出演している。
そして、公式が明かしているが、狩集家と関わりのある重要な人物として終盤に登場するのが、松嶋菜々子だ。松嶋と柴咲との邂逅は、豪華共演だ。そして豪華といえば、鈴木保奈美と松坂慶子が並んで家事をこなしていて、それが何気ないシーンに収まっている。思い出したが、松嶋と松坂はリメイク版『犬神家の一族』に出演していた。
終盤で、久能が以前観た映画のセリフとして、「犯罪とは、人間の努力が裏側に表れたものにすぎない」と語る。この映画は、エンドロールで『アスファルト・ジャングル』という1950年の洋画だと紹介された。もし機会があれば、この作品も観てみたい。
エンドロールの後にも、本編につながるであろう映像が流れる。リピーターでなければ、席を立たずとどまった方がいいと思う。
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