稲垣理一郎原作・池上遼一作画『トリリオンゲーム』
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最終更新日:2023/09/04
池上遼一
PCオタクでコミュ障のガクは、巨大IT企業ドラゴンバンクをはじめ、就職活動に全敗。口が上手いハルはドラゴンバンクの内定をもらっていたが、それを蹴ってガクと共に会社名を「トリリオンゲーム」として起業。ふたりは堅物で生真面目な高橋凛々を採用すると、いきなり彼女を社長にする。
ドラゴンバンクの社長令嬢であり取締役の桐姫こと黒龍キリカは、起業の資金確保やAIネットショップ事業などでトリリオンゲームの動向をチェックしつつ、時には敵対し、また時には彼らの手助けもする。目的はふたりを自分の支配下に置くことだが、やがて桐姫の父で社長の黒龍が、彼らを潰しにかかってくる。
原作は稲垣理一郎、作画は池上遼一で、ビッグコミックスペリオールに現在も連載中。そしてこの7月から、TBSでドラマとして放送されている。長くマンガを書き続けている池上遼一だが、手がけた作品が地上波のドラマで実写化されるのは、恐らく今回がはじめてだと思う。
ガクは独学でハッキングの技術を磨き、ハルはコミュニケーション術に長け、行動力がある。中学卒業間際、ガクがカツアゲされていたのをハルが助けるが、監視カメラに記録されてしまったハルをガクがその場で消去したことから、ふたりは友人になる。物語は、会社が10兆円企業になっていて、ガクの回想という形式が取られている。
ハルを目黒蓮、ガクを佐野勇斗、凛々を福本莉子、桐姫を今田美桜というのが、主なキャスト。桐姫以外は原作キャラのイメージ通りで、今田は演技でカバーしている(イメージ通りではないと言ったものの、じゃあ誰がと言われればちょっと浮かばない。菜々緒が近いが、彼女だと目黒や佐野との釣り合いがとれなくなる。演技で似せていることの方がすごい)。
目黒の役とのハマりようは、『るろうに剣心』の佐藤健に匹敵する。佐野はふだんはメガネをかけておらず、ヴォーカルユニットとして活動。役とは真逆らしいが、本作を観ている限りでは根っからのコミュ障ではと思えてくる。ふたりとも実は長身で、祁答院と並んでも身長差はほとんどない。見た目だけでなく、役としても吉川晃司演じる祁答院にひけを取っていない。
福本莉子は東宝シンデレラガールで、TOHOシネマズでは作品上映前に彼女がナビゲーターを務めている。本作登場時はやたらと声が大きく力んだ印象があり、凛々こんなキャラだったっけと思ったが、回が進むに連れて馴染んでいるように思う。
地上波のテレビドラマは、開始時はどの局も宣伝に力を入れるが、2ヶ月も経てば視聴率や世評に裁かれる運命にある。個人的にテレビドラマは年に1本観るか観ないかという頻度だが、本作には最初からかじりついた。(目黒蓮人気も後押ししているとは思うが)TverやU-nextで再生回数が上位に来ていることや、劇中の場面がネットニュースで取り上げられているのを見ると、結構嬉しい。
ドラマオリジナルのシーンやストーリーもあるが、ドラマの描写の方がいいと思えるところもある。原作では、ハルの面接シーンで桐姫の中国語とフランス語の問いに、ハルがどう答えたかがその場で明らかになっている。対してドラマでは、面接の場はハルがノリで答えたようになっていて、セキュリティ・チャンピオンシップの後に、ふたりがどのようにことばを交わしたのかが明らかになっている。
この記事を書いている時点で、ドラマはあと3話を残している。少しずつドラマオリジナルにシフトして行っているが、最後はどこにどのように着地するのか楽しみにしている。
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