『ビデオドローム』4K版を観た
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最終更新日:2024/07/31
デヴィッド・クローネンバーグ ディストピア, ブレードランナー
小さなケーブルテレビ局の社長マックスは、性や暴力に寄った過激な番組を探していた。あるとき、スタッフに盗聴させた「ビデオドローム」という海賊番組を観るが、延々と女性を虐待するだけの映像に驚愕する。恋人のニッキーは「ビデオドローム」に魅せられてしまい、番組への出演を求めて発信元のピッツバーグに旅立ってしまう。
マックスは、映像の作り主と思われるオブリビアン教授に会おうとするが、教授は既に亡くなっていた。しかし、実は教授は映像の中に取り込まれていて、マックスにも忠告する。程なくして、マックスにも同じような事象が発生。なぜか腹部に亀裂ができてしまい、護身用に持っていた拳銃が体内に入ってしまう。
1982年に公開されたホラー映画で、当時は理解されず興行的にも惨敗。しかし、その後のビデオソフト化などによって一部で熱狂的に支持され、現在は代表的なカルト映画のひとつになっている。今回上映40周年を記念して4K版が劇場公開。個人的に、作品名は知っていたが未見だったので、観に行って来た。
ストーリーは、現実と虚構とが途中から混在してしまい、理詰めで捉えれば辻褄の合わなさが鼻について駄作扱いしてしまいがちだ。しかし、その混在を混乱としてではなくファンタジックな描写として受け付けることができれば、カルト的人気になっていることも理解できる。今敏の『パプリカ』『千年女優』の、ルーツ的な作品と言ってもいいかもしれない。
監督はデヴィッド・クローネンバーグで、本作はこの人の代表作のひとつになっている。町山智浩の『ブレードランナーの未来世紀』には本作の章もあって、それによると1990年公開の『トータル・リコール』も、当初はこの人監督で企画が進んでいたそうだ(ポール・バーホーベン監督で公開)。
マックスはジェームズ・ウッズで、この頃はまだ無名だったそうだ。本作の2年後には、大作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』でロバート・デ・ニーロの同志を演じている。ニッキーは、なんとブロンディのデボラ・ハリー。時期的にブロンディ解散とソロ活動始動に当たり、女優としては恐らくほぼ初挑戦と思われる。劇中ではヌードも辞さず、ビデオドロームの影響を受けた変質的なラヴシーンを演じている。
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