Cocco 25周年 ベストツアー 2023 〜其の3・アコースティック編〜@Zepp Haneda
昨年秋から始まったcoccoの25周年ベストツアーも、アコースティックツアーと銘打たれている「其の3」が恐らく最終。会場は、意図的にと思われるが大都市ははずされていて、今回の参加は難しいかと考えていた。しかし東京公演が追加されたので、足を運ぶことにした。
ほぼ定刻に客電が落ち、キーボードの渡辺シュンスケひとりだけでのライヴ。このツアー、この人がオープニングアクトとなっていて、自身のインストバンドの曲をひとりで5曲ほど演奏。サンプリングを駆使しつつ、鍵盤の生音が気持ちよかった。MCで、はじめてCoccoのライヴに参加したのは、2017年の20周年武道館のときと言っていた。
数分の機材調整を経て、Coccoがグリーンのジャージ姿で登場。ギター藤田顕、そして渡辺シュンスケも同じくジャージ姿だ。3人とも椅子に腰掛けての歌と演奏で、全曲にCoccoが解説をつけるという、彼女のライヴとしては異色の構成だ。
『SING A SONG 〜NO MUSIC, NO LIFE〜』は、インディーズ時代のシングル。『強く儚い者たち』は原曲とは大きく異なるアレンジとなり、終盤でCoccoはウクレレを弾いた。『Baby, after You』では、歌詞の一部が合いの手のような構成になっているが、これを客に歌わせると宣言してから歌い始め、もちろん客側は呼応。
Coccoはハーモニカやツリーチャイム、シンバルなど、いろいろこなしていた。藤田は3本のギターを使い分け、渡辺シュンスケは曲によりピアニカを吹いていた。ふたりは要所でコーラスを入れていて、シンプルな編成である分ハーモニーの美しさが際立っていた。
Coccoの声量や声の伸び、音圧は相変わらず素晴らしい。曲間のMCではかなりリラックスしているのだが、いざ歌い始めたときの切り替えは、座って歌っているとは思えない迫力で、さすがと思わせてくれる。
今回のツアーでは、小さい会場や今まで行っていない地にも足を運んだらしく、ご当地ネタも語っていた。地方CMの音楽を口ずさみ、高松ではアイドルのように扱われたとか、さいたまでは草の話ばかりしていたとか、伊勢や出雲では神パワーを感じたとか、沖縄出身としては地続きで他県に行けるのが驚きだとか。
個人的なハイライトは、『お望み通り』『フリンジ』の2曲だった。前者は25周年ベストツアーの顔的な位置づけと思っていて、「其の1」「其の2」でもかなり盛り上がっていた。原曲はアッパーでノリのいいお祭りソングだが、歌詞はむしろダークで、それを考慮したアレンジにしたと言っていた。たしかにヘヴィーなアレンジだったが、カッコよかった。
後者はアルバム『スターシャンク』のラストの曲だが、歌詞もメロディーも少し切なく、しかし美しい曲で、近年のCoccoの曲では頭ひとつ抜けて気に入っていた。一方であまりライヴ向けの曲とは言えず、今回アコースティックのアレンジにのせて切々と歌ってくれたのが嬉しかった。
『光溢れ』でライヴを締めくくるが、Cocco自らアンコールをやることを告げ、場内は沸き立った。彼女のライヴでアンコールがおこなわれたのは、2005年の沖縄公演のときだけ(のはず)だからだ。「其の3」ツアーでは、毎回アンコールやっているのかな。
ラストの『ファンタジー』は未発表の新曲で、SNS時代のなんでもさらけださなくてはならない風潮をいなしつつ、疲れたときは休んでいい、もっと幸せになっていいというメッセージを込めた、明るい曲調だった。演奏の前に彼女は自身の息子のエピソードも語っていて、プライベートをさらりと明かすなんて、顔を出さないダークサイドクイーンはどこへ行った?というツッコミを入れたくなった。
SING A SONG 〜NO MUSIC, NO LIFE〜
東京ドリーム
四月馬鹿
強く儚い者たち
Again
Baby, after You
My Dear Pig
Tokyo Happy Girl
Rose letter
お望み通り
野火
フリンジ
sweet silence
光溢れ
アンコール
ファンタジー
3種類のベストツアーはそれぞれに特色があったが、そのどれもが彼女自身であり、テーマを分けることでバランスをとっているのだと思う。この後もいくつかのフェス出演が決まっていて、ライヴについては相変わらず精力的だ。一方の創作活動は、現状はシングルや新曲が先行している状態だが、近い将来にはニューアルバムが出ると思われ、ワタシたちは引き続き彼女の活動に期待していいはずだ。
関連記事
-
Cocco 20周年記念 Special Live at 日本武道館2days ー一の巻ー(2017年7月12日)
個人的にCoccoのライヴを観るのは8回目になるのだが(うち武道館は5回目)、今回最も座席に
-
Cocco 25周年 ベストツアー 2022 〜其の1〜@KT Zepp Yokohama
5月から6月にはアルバム『プロム』にリンクしたツアーをおこない、そして11月からはベストツア
-
Cocco Live Tour 2022 ”プロム”@東京ドームシティホール
2020年に予定していたライヴハウスツアーがコロナ禍で中止になったCoccoだが、今年2年ぶ
-
Cocco Live Tour 2019 “Star Shank”@東京国際フォーラム ホールA
10月にリリースしたアルバム『スターシャンク』に伴うツアーで、この日は中日に当たる。カメラク
-
Cocco 25周年 ベストツアー 2022 〜其の1〜@Zepp Haneda
11月8日の横浜から始まった、25周年ベストツアー其の1。約10日間のインターバルを経て、こ