ビョーク(björk : orchestral)@東京ガーデンシアター
コンスタントに来日している印象があるビョークだが、来日は2017年フジロック以来6年ぶり。単独ツアーとなると、2008年以来実に15年ぶりになる。今回は2種類の内容の異なるライヴを並行していて、この日はビョークの肉声と32人のオーケストラで構成される「orchestral」だ。
定刻の7分ほど前に、オーケストラの人たちがステージに姿を見せ、持ち場についてウォーミングアップ。全員日本人だ(2001年に観た『Verpertine』の来日時もそうだった)。やがて定刻通りに客電が落ち、長身のアイスランド人男性指揮者が登場。そして、いよいよビョークその人が登場。『Stonemilker』でライヴはスタートした。
ビョークは、曲の前半では向かって右側を向いて歌い、後半は左側を向いて歌っていた。グリーンを基調としたドレス姿で、特に袖まわりにヴォリュームがあって結構重そうだ。刺繍柄のマスクで目もとを覆い、なかなか表情は伺えない。
ステージには装飾はない。その分ライティングが結構重要な要素になっていて、オーケストラの面々を赤く照らすこともあった。バックドロップには映像が流れるでもなく、曲によりブルー、グリーン、レッドなどの原色に彩られ、グラデーションになっていて、上部または下部が半透明になっていた。
ステージがシンプル、ということは、それだけビョークの歌声に没頭できるということだ。結構頻繁に息継ぎしていたように見えたが、それは屋内会場でのオーケストラ演奏だから気づけたのかもしれない。フェスや単独で5、6回彼女のライヴを観させてもらっているが、声質はほとんど変わっていないと思える。ビョークはほぼ1曲毎に「アリガトウ」と言い、数曲毎に水分を摂っているようだった。
映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の『I've Seen It All』が聞けたのは嬉しかった。彼女は大半の曲でハンドマイクで歌ったが、『Hunter』の後半などではスタンドマイクで歌っていた。『Isobel』のオーケストラバージョンはとても新鮮、イントロの時点で歓声が起こった『Jóga』はまさにこのバージョンにフィットしていた。
本編ラストは『Hyperballad』で、エレクトロニカルな原曲が、オーケストラバージョンになったことで新たな生命を吹き込まれたかのようだった。アンコールは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のインスト曲『Overture』で始まり、演奏終了後にビョークが姿を見せた。チェリーブロッサムを見るのははじめてとか、言っていた気がする。オーラスが『Pluto』で、デジタルモード全開の原曲をオーケストラでやるというのは、かなりのチャレンジに思えた。
セットリスト
Stonemilker
Aurora
Come To Me
Lionsong
I've Seen It All
Freefall
Hunter
You've Been Flirting Again
Isobel
Jóga
Quicksand
Notget
Hyperballad
アンコール
Overture
Pluto
約1時間15分という尺は、彼女のキャリアからすれば短い部類になるだろう。がしかし、中だるみを起こさず凝縮した密度の濃いパフォーマンスにするためには、得策だったと思う。
さて、別スタイル「cornucopia」のライヴは次週開催予定で、こちらにも足を運ぶ予定。「orchestral」でもそうしたが、敢えて情報を仕入れずまっさらな状態で臨むつもりだ。
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