ブレードランナーLIVE@オーチャードホール
スクリーンに映画を流しながらオーケストラが生演奏する、シネマコンサート。興味はあったが、ついにそれを体感する日が来た。それも、ワタシが最も好きな映画『ブレードランナー』でだ。
午後2時という日中帯の開演で、少し前からほとんどの演者はスタンバイ。5分ほど過ぎたところで客電が落ち、総指揮の人が登場。この人は客側に背を向け、スクリーンに向かい合うようにして着席。映像が始まり、この人の合図にて演奏も始まった。
演者は総勢11名で、最後方のひな壇にパーカッションがふたり。ひとつ前の壇には、向かって左から右に、フルート&サックス、バイオリン2名、ヴィオラ、チェロ、ベース。更に手前には、ふたりのシンセサイザー奏者。そして、総指揮の人だ。フルートとシンセのひとりは、日本人だった。
映画は何度も観ているが、それでもすべての場面を観るたび感動がよみがえってくる。巨大な漆黒のピラミッドのような、タイレル社本社ビル。強力わかもとの電飾をはじめとするビル群や、歌舞伎町を思わせる市街地。デッカードとうどん屋親父との、「4つくれ」「2つで充分ですよ」のやりとり。
ふたりのシンセは、音の鮮明さや素晴らしかったが、客側からだと手元が全く見えず、どちらがどの演奏をしていたかがわからなかった。エスニック調の歌については、女性バイオリニストのひとりが起立し生歌を担っていた。もちろんすべてが生演奏というわけでもなく、BGMをそのまま生かしている場面もあった。
デッカードがゾーラを射殺したところで、約15分の休憩となる。再開し、デッカードがコワルスキーに追い詰められていたところをレイチェルに助けられ、ふたりはデッカードの部屋へ。
レイチェルは自分がレプリカントであることを自覚し、自分のすべてはタイレル博士の姪のコピーかもしれないと思いつつもピアノを弾く。デッカードは、その音色を発しているレイチェルを肯定。ここで流れるのが『愛のテーマ』で、サックスの生演奏は沁みた。ここはクライマックスと同じくらい重要なシーンだと思っていて、それをこのように体験できたのは嬉しかった。
そしてクライマックスだが、バッティはデッカードを追い詰めつつ、自身がもう長くはないことを自覚していたと思われる。自ら釘を手の甲に打ち付け、苦痛を感じることで生きていることを実感したかったのだろう。そして、ルトガー・ハウアーによるアドリブを経て、力尽きていく。この辺りになると、演奏は全員が総力を結集させてぐいぐい攻め込んでいるイメージで、作品と見事にシンクロしていた。
このシネマコンサートは、もともと2020年4月に予定されていた。それがコロナ禍によって中止になってしまったが、まさかリスケジュールされるとは思わなかった。何度も観ている作品であっても、劇場や自宅で観るのとはまた異なる、貴重な体験になったと思っている。
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