Cocco 25周年 ベストツアー 2023 ~其の2~@中野サンプラザ
昨年秋、デビュー25周年ベストツアーを「其の1」としてライヴハウス会場で敢行したcocco。そして、今月からはホール会場での「其の2」がスタート。今夜は、その2公演目になる。
定刻を10分ほど過ぎたところでSEが始まり、そして場内が暗転してバンドメンバーが先にスタンバイ。暗がりの中をCoccoが登場し、さて「其の2」はどのように始まるのかと構えた。
なんと、『焼け野が原』『ドロリーナ・ジルゼ』の2連発で、どちらもクライマックスを飾っておかしくないナンバーを、オープニングに持ってきた。2017年武道館の「ニの巻」を彷彿とさせるセットで、そして個人的にはドツボだ。
バンドは、向かって右から左にギター長田、キーボード渡辺シュンスケ、ドラム椎野、ベース根岸、ギター堀越で、顔ぶれもポジショニングも去年の「其の1」と同じ。ホール会場ということでステージは広く天井も高く、周囲にも上方にもスペースがある。グッズのタオルがドラムセット前に飾られているほかは、特に凝った装飾はない。
そしてCoccoだが、グレーのシフォンスカートに白のロングスリーブのタートルネック姿。ヴェールもなく、ライトもふつうに彼女を捉え、つまり今回はダークサイドクイーンではない。ちょっとふっくらした印象があるが、彼女はもともと細すぎるので、むしろちょうどいいくらいだ。
今更だが、バンドの演奏力は恐ろしいほどに高い。椎野のビート、長田のカッティング、堀越のソロ、根岸のベースリフ、シュンスケのメロディーライン(この人はサンプリングも担っていたかも)、と、曲中に彼らの見せ場は随所に垣間見ることができる。がしかし、Coccoのパワーは彼らを凌駕し、そして従えている。ソロアーティストとしては、理想的な佇まいだ。
今回のライヴは、激しさや美しさに加え、「楽しさ」に満ちている。ピンクの法被を着た男性スタッフ4人が両サイドに出てきてコーラスしたり、『BEAUTIFUL DAYS』でショウが沸点に達したかと思うと、続く『お望み通り』では4人に加えジャージ姿の男女スタッフも出てきて、Coccoと同じフリをする。
そして、「其の1」ではほとんどMCがなかったが、今回はあった。リハーサルで長田や根岸の機材トラブルがあり、開演が10分遅れて申し訳ないと言っていた(10分程度遅れはほとんどのライヴでありうることと思うし、充分許容範囲だけど)。後半のMCでは、ゲッターズ飯田の本をもらったが、この日の運勢は最悪で、だけど暴れまくってるとか。ゲッターズをあまりにも連呼するので、笑ってしまった。
『音速パンチ』は、出だしにも終盤のギアチェンジにも有効なアッパーなナンバーだが、この日も今まで以上に機能した。そしてラストは、この日配信リリースされた新曲『クジラのステージ』だ。またもや法被部隊が登場し、Coccoも歌やフリを通して自身を解放しているように見えた。ダークサイドクイーンとの、振り幅が大きすぎる。そして、「其の1」ではしなかったメンバー紹介、自身の紹介をして、締めくくった。
6人で肩を組んでステージ前に並び、挨拶。しかし、6人ともなかなか足を動かさない。するとCoccoが上の方を指差し、幕が降りてきた。やがて幕が下まで来ると、彼女は隙間から顔を覗かせて見えなくなるまで手を振ってくれた。
セットリスト
1.焼け野が原
2.ドロリーナ・ジルゼ
3.樹海の糸
4.恋い焦がれて
5.あなたへの月
6.ベビーベッド
7.楽園
8.もくまおう
9.BEAUTIFUL DAYS
10.お望み通り
11.コスモロジー
12.Raining
13.海辺に咲くばらのお話
14.潮満ちぬ
15ポロメリア
16.花柄
17.音速パンチ
18.ウナイ
19.クジラのステージ
ラストの新曲『クジラのステージ』は、Cocco史上最も明るく楽しい曲ではないだろうか。それまでにもほのぼの系の曲はいくつかあったが、ここまでピースフルで多幸感に満ちた曲ははじめての気がする(ただ、入場時に配布された手書きの歌詞を読むと、必ずしも・・・)。そして、彼女の名刺的な曲『強く儚い者たち』が、今回セットリストから落ちた。個人的に彼女のライヴを10回以上観てきた中、この曲は必ず歌われた。テレビ出演時にも、最も求められた曲だった。
つまり、ツアー「其の2」はベストツアーと言いつつ、キャリアの総括というより、彼女が次のステップに進まんとしているのだと思う。彼女の魅力は勿論『強く儚い者たち』だけではないし、この曲に限定や集約はされるべきではないと思っている。このツアーはまだ始まったばかりで、個人的には4月にもう1回行く機会に恵まれているので、そこで彼女の歌とパフォーマンスを堪能したい。
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