ゴールデンボーイ(1998年)
16歳の高校生トッドは、授業でホロコーストについて学んだのをきっかけに興味を持ち、第二次大戦や強制収容所の本を読み漁る。バスの中で見覚えのある老人を見かけたトッドは、彼が強制収容所の所長クルト・ドゥサンダーであることに気づく。ドゥサンダーは、アーサー・デンカーと名乗っていた。
トッドはデンカーに接触して脅迫し、身元を公表しない代わりに収容所時代の話をさせ、更にはナチスの軍服を着ることを要求する。デンカーは、少年のたわごとと最初は相手にしなかったが、結局は従わざるをえなくなる。やがてデンカーには当時の記憶がよみがえり、トッドは話の生々しさに興奮を覚える。
スティーブン・キング原作小説の、映画化になる。トッドの年齢が3歳上げられているほかは、ストーリーはほぼ原作に忠実と思う。老人と少年との奇妙なつながり、そして前半はトッドの方がデンカーを脅す。中盤以降、デンカーはことば巧みにトッドを揺さぶるが、結局は入院し身元がばれてしまう。
映画と原作とでは、ラストが決定的に異なっている。警察にデンカーとの関係を問われてしらをきるトッドの嘘をスクールカウンセラーのエドが見抜くが、トッドはエドの離婚につけこんで少年に興味を持つ同姓愛者と言いふらすと脅し、かわすことに成功。一方の原作は、トッドが街中で銃を乱射するというショッキングな結末だが、さすがに映画ではそこまではやれなかったようだ。
キャストは、トッドにブラッド・レンフロ。当時ほぼ実年齢の役で出演し、徐々に狂気を抑えられなくなっていく少年心理を見事に表現している。が、プライベートでは薬物関係での問題が多かった。2008年に、ヘロインの過剰摂取で25歳の若さで亡くなっている。
デンカーはイアン・マッケランで、時間軸的には本作の3年後に『ロード・オブ・ザ・リング』にガンダルフ役で出演。見た目のイメージは、ほぼ変わらない。本作では、草臥れた老人でありながらところどころに威厳と狂気をちらつかせていて、さすがと思わせてくれる。
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スティーヴン・キング「ゴールデンボーイ」
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