『THE FIRST SLAM DUNK(スラムダンク)』をドルビーシネマで観た(ネタバレ注意)
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最終更新日:2024/05/01
SLAM DUNK
公開前は、前売り開始後に声優交代が発表されたことやあらすじが一切明かされないことなどにより、ネガティブな評判が先行。そして、公開後には一転して絶賛されるという不思議な現象に。個人的には、ネット上で公開後の情報を極力仕入れないようにしつつ、劇場まで足を運んだ。
大枠としては、想定通り。宮城リョータが主人公で、そして、試合はインターハイの山王工業戦だった。ストーリーは、試合のシーンとリョータをはじめとする湘北メンバーのドラマシーンが交互に展開する構成になっていた。
まずドラマのシーンだが、予告映像でも流れていた少年ふたりのワンオンワンは、小学生のリョータと兄ソータだった。ふたりは父を亡くしたばかりだが、程なくして兄も水の事故で亡くなってしまう。山王工業戦に、リョータは兄が使っていたリストバンドを腕につけて臨んだ。赤木と三井の回想シーンもあったが、どちらにもリョータが絡んでいた。
リョータを主人公に据えたがゆえの、いくつかの処置がある。桜木と流川のクローズアップが減り、ふたりを見守る安西のセリフはなくなり、晴子の出番も減っている。この試合に至るまでの湘北の戦いぶりも最小限にとどまり、魚住が赤木を叱咤激励するシーンもなくなった。
山王との戦いは、前半の描写は試合開始直後にとどめ、後半に集中したのは正解だった。3分で20点差がつけられ、絶望感が突きつけられる。この時点で三井とリョータはバテバテ、対照的にボールに触っていない桜木は、体力にかなりの余裕があることが伺える。安西はその桜木を反撃の起爆剤にし、それは成功するが、ルーズボールを追いかけたときに背中を痛めてしまい、選手生命すら危ぶまれる事態になる。しかし、安西を振り切ってコートに戻る桜木。
三井のスリーポイント、赤木の河田との競り合い、流川と沢北のマッチアップなどを経て、徐々に追い上げる湘北。後半開始時は執拗なマークを打開できなかったリョータが、終盤にはすり抜けてドリブルしパスをつなぐ。山王推しに支配されていたはずの場内の空気が、いつしか湘北を応援する空気に一変してしまう。山王以上に、湘北ベンチの方が驚いている。
ついに、あの瞬間だ。湘北逆転のシーンからはセリフをカットし、映像と効果音のみで魅せる。ボールを持つプレーヤーの動きが加速されていくのが、線を大幅に増やすことによって更に緊迫感が増す。山王に再逆転された後、流川がドリブルで一気にゴール前へ。そこへ立ちはだかる沢北。残り時間がもうほとんどない。とそのとき、ゴール前に構えていた桜木に流川がパス。桜木がシュートを放つ。
ここで、無音。
映像はもちろん進行しているのに、広い劇場内が、ウソのように静寂に包まれる。
残り時間がゼロ秒になったのとほぼ同時に、ボールがゴールにおさまった。
桜木と流川が交わすハイタッチで、音声が復活。そこへ真っ先に駆け寄ったのが、「主人公」のリョータ。
井上雄彦が脚本と監督を務めたのは、まさにこのシーンを自ら描きたかったからではないだろうか。
この瞬間の素晴らしさは、劇場に行かなければ体感できないだろう。個人的には、音響ならimaxを凌ぐと認識するドルビーシネマを選んだのは、大正解だった。
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