*

寺沢武一『コブラ』

寺沢武一『COBRA1』

寺沢武一の『』は、1978年に少年ジャンプで連載が始まった。劇画タッチであり、SF考証もかなりしっかりしていて、その上少し刺激的でもあり、と、少年誌に連載されるにはかなり異彩を放っていた。休載を繰り返したり、その後掲載する雑誌や出版社が変わったりするなどして、長期に渡って連載されている。

『コブラ』はアニメ展開もされている。まず1982年に劇場版が公開され、その後にテレビシリーズが『スペースコブラ』として始まった。原作の前期に当たる部分をアニメ化していて、基本は原作を踏襲しているが、細部の設定やストーリーの一部は変更されている。ワタシは原作の前半はリアルタイムで読んでいたし、劇場版もテレビもひと通り観た。忘れていた内容が、アニメを観ることで少しずつ思い出してきて、原作はこうじゃなかったという、ツッコミまで入れられるようになった。

単行本も何冊か買っていたが、今でも覚えていることがある。今のジャンプの単行本はどうなっているかわからないが、当時は巻末に作品や作者に関わる人のコメントが掲載されていた。『コブラ』1巻の巻末にはなんとがコメントを出していて、アシスタントとして応募してきた寺沢を手違いから落としてしまい、こんなに才能のある人なのにと後で慌ててアシスタントに採用した、というエピソードが書かれていた。

『コブラ』の世界観には『スター・ウォーズ』の要素を垣間見ることができ、主人公コブラの人物像には、ルパン三世や矢吹丈といった大人でクールなヒーローがダブる(がビジュアルのモデルと知ったのは、つい最近のこと)。今ワタシたちが使っているパソコンを思わせるコンピューターや、スノーボードを思わせるジェットスキーなどが、劇中に登場していることには驚かされる。

第1話で、記憶を消し顔を変えてジョンソンとして冴えないサラリーマンとして生活していたコブラが、トリップムービーを観たことで記憶が徐々によみがえってくるくだりがあり。このプロットは、の短編『追憶売ります』が元ネタではないかと思っている。後にこの書を原作としたハリウッド映画『トータル・リコール』が公開されるが、時間軸的に『コブラ』の方が先んじている(トリップムービーは、こんにちの映画のMX4Dや4DXを予見したようなテクノロジーだ)。

マンガやアニメは日本が世界に誇れるサブカルチャーだが、『コブラ』は世界に誇れるSF作品だ。

関連記事

COBRA THE ANIMATION『ザ・サイコガン』

自分の「仕事」で美術館に入ったコブラは、海賊ギルドが化石虫を狙うところに居合わせ、行きがかり

記事を読む

寺沢武一『コブラ』のテレビアニメ第1作『スペースコブラ』

劇場版『SPACE ADVENTURE コブラ』が公開から3か月後の1982年10月、テレビ

記事を読む

SPACE ADVENTURE コブラ(1982年)

惑星ダグザード。賞金稼ぎのジェーンは、かつて名を馳せたコブラと名乗る男を最初は信じなかったが

記事を読む

『コブラ大解剖』を読んだ

日本の名作マンガ・アニメをムック本として特集する、「大解剖ベストシリーズ」。寺沢武一の『コブ

記事を読む

COBRA THE ANIMATION(テレビシリーズ)

寺沢武一原作『コブラ』が、2008年から2009年の『ザ・サイコガン』OVAリリースを経て、

記事を読む

  • 全て開く | 全て閉じる
PAGE TOP ↑