寺沢武一『コブラ』
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最終更新日:2023/09/14
コブラ コブラ, ジャン=ポール・ベルモンド, スター・ウォーズ, フィリップ・K・ディック, 手塚治虫
寺沢武一の『コブラ』は、1978年に少年ジャンプで連載が始まった。劇画タッチであり、SF考証もかなりしっかりしていて、その上少し刺激的でもあり、と、少年誌に連載されるにはかなり異彩を放っていた。休載を繰り返したり、その後掲載する雑誌や出版社が変わったりするなどして、長期に渡って連載されている。
『コブラ』はアニメ展開もされている。まず1982年に劇場版が公開され、その後にテレビシリーズが『スペースコブラ』として始まった。原作の前期に当たる部分をアニメ化していて、基本は原作を踏襲しているが、細部の設定やストーリーの一部は変更されている。ワタシは原作の前半はリアルタイムで読んでいたし、劇場版もテレビもひと通り観た。忘れていた内容が、アニメを観ることで少しずつ思い出してきて、原作はこうじゃなかったという、ツッコミまで入れられるようになった。
単行本も何冊か買っていたが、今でも覚えていることがある。今のジャンプの単行本はどうなっているかわからないが、当時は巻末に作品や作者に関わる人のコメントが掲載されていた。『コブラ』1巻の巻末にはなんと手塚治虫がコメントを出していて、アシスタントとして応募してきた寺沢を手違いから落としてしまい、こんなに才能のある人なのにと後で慌ててアシスタントに採用した、というエピソードが書かれていた。
『コブラ』の世界観には『スター・ウォーズ』の要素を垣間見ることができ、主人公コブラの人物像には、ルパン三世や矢吹丈といった大人でクールなヒーローがダブる(ジャン=ポール・ベルモンドがビジュアルのモデルと知ったのは、つい最近のこと)。今ワタシたちが使っているパソコンを思わせるコンピューターや、スノーボードを思わせるジェットスキーなどが、劇中に登場していることには驚かされる。
第1話で、記憶を消し顔を変えてジョンソンとして冴えないサラリーマンとして生活していたコブラが、トリップムービーを観たことで記憶が徐々によみがえってくるくだりがあり。このプロットは、フィリップ・k・ディックの短編『追憶売ります』が元ネタではないかと思っている。後にこの書を原作としたハリウッド映画『トータル・リコール』が公開されるが、時間軸的に『コブラ』の方が先んじている(トリップムービーは、こんにちの映画のMX4Dや4DXを予見したようなテクノロジーだ)。
マンガやアニメは日本が世界に誇れるサブカルチャーだが、『コブラ』は世界に誇れるSF作品だ。
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