浜田省吾＠パシフィコ横浜 – SHOGO HAMADA ON THE ROAD 2022 Welcome Back to The Rock Show “EVE”

ここ数年は、テーマを掲げた企画モノ的なツアーをおこなっていた浜田省吾（準備はしていたが、コロナ禍のために中止になってしまったツアーもあったかもしれないが）。この秋からは、久々に通常モードのホールツアーをおこなっている。5,000人規模のパシフィコ横浜は、東京国際フォーラムと並びホール会場としては国内最大規模になる。

開演3分前に、場内が暗転。浜田ヴォーカルによるビートルズ『In My Life』アコースティックバージョンがSEとしてワンコーラス流れたところで予定時間ぴったりとなり、ここでバンドメンバー入場。最後に浜田が姿を見せ、『光と影の季節』でスタート。そして、ツアー定番曲のひとつ『Hello Rock'n Roll City』。サビはもちろん、ご当地にリンクさせて「YOKOHAMA CITY」となる。横浜市民でよかったと、実感する瞬間だ。

バンドは、恐らく1月の武道館のときから不動だと思われる。後方向かって右から左に、オルガン福田、ドラム小田原、ベース美久月、ピアノ河内、サックス古村、トランペット佐々木、トロンボーン清岡、中嶋と竹内の女性コーラス。前方向かって右はギター長田、左は浜田の盟友ギター町支。総勢11名だ。

これまで何度もライヴを体験させてもらっているが、いずれもスタンド席からだった。今回（数えてみたら9回目）はなんと1階6列目という、ステージに近い座席に恵まれた。間近で見る浜田は腕も足も細く、驚くほど小柄だった（髪は、恐らく銀髪に染めているのかな）。決して体力有り余るとは思えない体格ながら、そのパフォーマンスはバイタリティーに溢れている。つまり、オーラパワーが凄いのだ。

客への配慮として着席を促し、中盤ではスローナンバーを数曲続ける浜田。『君の名を呼ぶ』は、聴けば聴くほどに味わいがにじみ出す名曲のひとつだ。またMCでは、横浜公演は2016年以来6年ぶりながら、パシフィコ横浜は人生初ライヴとのこと。ロックな会場と言い、気に入っていた様子だった。

ここ数年のツアーに倣い、本公演も2部構成になっている。第1部ラストは、浜田がセットリストを考えるときに今自分が歌いたい曲だと言って始めた。テクノ調のイントロの時点で既に気づいていたが、浜田のハーモニカで更にギアが入り、ギターのリフが絡み、そして始まった。『モノクロームの虹』だ。歌詞は社会派とラヴソングがミックスされ、そして浜田のアティチュードとしては『J.BOY』の発展形ではないかと思っている。個人的には浜田の好きな曲ベスト3に入り、なぜツアー定番曲にならないか不思議だ。バンドの演奏も総力を結集したモードになり、最高の形で第1部を終了した。

約15分のインターバルでは、ステージにこれまでのツアーのイメージポスターやライヴのフォトがスライドショーとして映された。そして、第2部もスロー／アコースティックモードで、『夏の終わり』でスタート。ツアー中は自分が30代のつもりでいるが、日常では実年齢を感じてしまったことなどをMCとして挟みつつ、しばらくは和やかなムードで進む。

シフトチェンジしたのは、『ON THE ROAD』からだ。今回のツアーは、82年にはじめてツアータイトルに「ON THE ROAD」を冠してから40周年で、言わば浜田自身のテーマ曲的な位置づけにあると思う。続けて、今度は21世紀になってからの名刺的な曲『I am a father』となり、イントロのコーラスは竹内＆中嶋による生ヴォーカルだ。時任三郎が主演したPVもあるが、今回バックドロップのスクリーンに流れたのは実写をコラージュしたと思われる独自の映像だった。

そして、いよいよ『J.BOY』だ。第2部が始まったときから、いつ来るいつ来ると、心の中でずっと唱えていた。イントロのリフで町支・浜田・長田の3人が横一列になってギターを弾き、このショットだけで鳥肌モノだった。浜田にとってだけでなく、日本のロックにとって決定的な曲のひとつだ。

これまでのツアーでも、浜田はバンドメンバーをフィーチャーする場を必ず設けてきた。町支や長田、古村は言わずもがなだが、後方のメンバーもだ。個人的には、美久月のベース音がライヴ全編を通して抜けがいいことを嬉しく思っていたが、『J.BOY』の間奏での美久月のソロはその最たる瞬間だった。魂を込めた浜田の熱唱の後に訪れるアクセントで、それが後の長田のギターソロ、古村のサックスをより際立たせていた。

浜田はロシアのウクライナ侵攻にも触れつつ、映像に侵攻される前のウクライナや311被災前の東日本の映像を流していた。スケール感溢れる『家路』で2部を締めくくると、2度のアンコールに応えた。『みちくさ』には意表を突かれ、去年リリースされたシングル『この新しい朝に』には、まだまだ現役であることを伺わせた。浜田がもう1曲やろう！と言って披露したのは『終わりなき疾走』。更に2度目のアンコールで、ダメ押しのオーラスは『日はまた昇る』だった。

セットリスト
【第1部】
光と影の季節
HELLO ROCK & ROLL CITY
この夜に乾杯!
今夜こそ
君がいるところがMy Sweet Home
君の名を呼ぶ
あれから二人
我が心のマリア
光の糸
旅するソングライター
モノクロームの虹
【第2部】
夏の終り
星の指輪
君に捧げるlove song
ON THE ROAD
I am a father
J.BOY
家路
-アンコール-
みちくさ
この新しい朝に
終りなき疾走
-アンコール-
日はまた昇る

このツアーのタイトルには「”EVE”」とあったので、来年2023年には何かやってくれるだろうという予想はしていた。2部ラスト『家路』の前のMCで、浜田は来年アリーナツアーをおこなうことを自ら発表。この年末には70歳になる浜田だが、当然今後も現役で、「STILL ON THE ROAD」なのだ。横浜には、横浜アリーナのほかぴあアリーナもあるし、来年秋にはさいたまスーパーアリーナを凌駕するKアリーナがオープン予定だ。

YOKOHAMA CITY、待ってます。