アナザーストーリーズ 運命の分岐点「松田優作“ブラック・レイン”に刻んだ命」
事件や特定の人物など、その裏側に隠されたもうひとつの物語を追うドキュメンタリー番組、「アナザーストーリーズ」。放送がBSから地上波に移り、BSの放送をそのまま再放送しているだけかと思いきや、新規のコンテンツも制作されていた。さる11月11日は、松田優作(11月6日が命日)を扱っていた。
松田優作に関する特集は、これまでにもテレビで断続的に放送されてきた。しかし今回は、劇場版の遺作となった『ブラック・レイン』に絞り、優作に近い人の証言を取っている。個人的にはそれなりに知っているつもりでいたが、それでもこの番組を観てはじめて知ったことがあった。
アンディ・ガルシアは、『ブラック・レイン』では松田優作演じる日本のやくざ佐藤役と対決するニューヨーク市警チャーリー役で共演していて、劇中でチャーリーは佐藤に首を切り落とされて絶命するショッキングなシーンを演じている。アンディは、このシーンを撮影するためにはふたりの間に信頼関係が成り立っていることが必要で、それが構築できていたと語っていた。ふたりは割と歳が近かったこともあり、撮影の合間には意気投合していたとのこと。今でも大事にしているという一緒に撮った写真を、アンディは見せてくれた。
アシスタントプロデューサーで通訳を兼ねていた人物は、優作がオーディションを受けたときの様子を語った。ほかの俳優はオーバーな演技をしたが、優作は静かな演技をして、それでいて凄みを出していたので、それがハマったのだと。また、撮影の時点で優作はガンを患っていたが、周囲はほとんどそれを知らなかった。しかしこの人は、異変に気付いていたという。撮影終盤のときにトレーラーハウスのトイレに閉じこもり、ほかの役者やスタッフを待たせたことがあったそうだ。恐らく、痛みに耐えていたのだという。
石橋凌は、優作と知り合うことで俳優の世界に入った人だ。『ブラック・レイン』の撮影時、優作が帰国するたびに石橋は呼び出され、興奮しているさまを聞かされたそうだ。松田優作は、日本人俳優がハリウッドで活躍するために、3つのハードルを意識していたという。SAG(全米映画俳優組合)に加入していないこと、ことば、東洋人への差別。石橋は、優作の死後にその遺志を継ぎ、俳優活動を進めてSAG加入を果たしたそうだ。
松田美由紀は、優作と結婚したことで自らの俳優活動を強制的にやめさせられた(今なら世の中からバッシングされるだろう)。今回、大阪府警として撮影された大阪府庁舎をはじめ、ロケ地をはじめて訪れたそうだ。完成した『ブラック・レイン』の優作の演技を観て、自分が家庭に収まったことに納得したという。美由紀は優作とは年齢がひとまわり下で、結婚したときは22歳だったが、優作のあのクセが強いキャラクターを受け入れられる人だった。
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