探偵物語(1983年)
アメリカ留学を控えた女子大生の直美は、中年男性に尾行されていることに気づく。男は探偵の辻山で、直美のボディーガードを依頼されていた。辻山は幸子という女性と離婚していて、幸子はナイトクラブでシンガーをしていた。
ナイトクラブのオーナーが刺殺され、愛人関係にあった幸子に疑いがかかる。オーナーの父は暴力団組長で、組員たちは幸子を探す。辻山は幸子の無実を信じて真犯人を探すが、直美も首を突っ込んでくる。
主要キャストは、直美を薬師丸ひろ子、辻山を松田優作、幸子を秋川リサ、直美の家のお手伝いさんを岸田今日子、暴力団組員に財津一郎。脇を固めるのが、辻山の上司に荒井注、刑事に蟹江敬三、警官に林家木久蔵(現:木久扇)、直美を誘う中年男を加藤善博、屈強な組員をストロング金剛、など。原作は赤川次郎、監督は根岸吉太郎、脚本は鎌田敏夫、音楽はなんと加藤和彦だった。
『セーラー服と機関銃』で薬師丸ひろ子の人気は爆発したが、その後大学受験で休業に入って公の場に出なくなったため、ミステリアスな魅力が備わるようになった記憶がある。本作は復帰作になり、作品も、彼女が歌った主題歌(作詞松本隆、作曲大瀧詠一)も、共にヒットした。
薬師丸ひろ子は、最初から俳優としてスタートしているため、女性アイドル歌手が映画に出るのとは一線を画しているイメージが、当時はあった。がしかし、改めて観てみると、彼女ありきの作品として作られている印象が強い。上述のバックボーンから、角川としてはとにかく彼女を前面に出して売ろうとしていたのかもしれない。
直美は、大人と子供の狭間に立っているようなキャラクターで、はじめは辻山をうざく思っていたのが徐々に惹かれるようになったり、その辻山と幸子の大人の関係に戸惑ったりする。大学のサークルの先輩やその恋人との、微妙な距離感は対照的だ。ラストの辻山と直美のキスシーンはかなり濃厚で、こんなだったっけ?と驚いてしまった。
辻山の松田優作だが、暴力団組員に囲まれて怯む役柄は、それまでの作品での強い役を知っていて観ると新鮮。本人は、アクション俳優から性格俳優にシフトし、定着しつつあった頃だ。ラストの前、直美と辻山が対話するシーンがあって、松田優作はここでのシーンに自身のこの作品での勝負を賭けていたように思えた。
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