Cocco 25周年 ベストツアー 2022 〜其の1〜@KT Zepp Yokohama
5月から6月にはアルバム『プロム』にリンクしたツアーをおこない、そして11月からはベストツアーを敢行。年に2度も、しかも内容の異なるツアーを観られる幸福感を噛みしめている。この日は、ツアー初日だ。coccoは東京では何度となくライヴをしていると思うが、横浜となると非常に珍しい(もしかして初?)。
開演予定から6分ほど過ぎたところで、場内が暗転。まずはバンドメンバーが現れてスタンバイ。少ししてから、Coccoが走って登場する。しょっぱなは『強く儚い者たち』だが、個人的に意外さはなかった。世に最も知られている、言わば彼女の代表曲だが、この曲をアタマに持ってくることに、彼女のブチかますという姿勢が感じられたからだ(2017年のフジロックでもコレをやってほしかった)。この曲のライヴにはふたつのバージョンがあって、終盤にCoccoがスキャットを入れる場合と入れない場合だ。前者は活動再開後、後者は活動休止前の傾向だが、この日は後者だった。
バンドは、後方向かって左にベース根岸、中央にドラム椎野、右にキーボード。前列左右にはふたりのギタリストで、向かって右が長田だった。そしてもうひとりのギタリストだが、結構大柄で長髪を後ろで結んでいて、この人誰だろう?その見た目が結構インパクトがあるのだが、それだけでなく、ディストーションを利かせまくったプレイはCoccoのライヴでは異端で、その分楽しめた。
前半は、まさに「ベストツアー」で、主に活動休止前の曲をこれでもかとばかり畳みかける。『雲路の果て』では、Coccoとふたりのギタリストとがバトルを繰り広げている錯覚にも陥った。『遺書。』は個人的にCoccoベスト、『風化風葬』はかつて沖縄に行ったときにタワーレコードで限定盤を入手した思い出があり、これらを2022年の今なおナマで聴けることに幸福感を嚙み締めた。シングル曲オンリーかと思いきや、『晴れすぎた空』『やわらかな傷跡』と、意外な曲もあった。
活動休止前から再開後にシフトしたのが、中盤の『有終の美』からだ。そして、おそらくこのツアーを象徴する位置づけと思われる新曲『お望み通り』が。セクシーでちょっとエロティックなメロディーは、彼女の曲としてはかなり異色だ。終盤になると黒子が手作り感ありありのクルマでステージに登場。こんな演出、彼女のライヴでははじめてでは?
『焼け野が原』では、活動休止直前のミュージックステーション出演時の映像が頭に浮かんだ。生放送の約4か月後に特番が放送されて、このとき彼女は「God bless you」と言っていたことがわかった。もちろん、現在の彼女が歌うこの歌には、そのときのような終末感はなく、クオリティの高い名曲として響いている。ラストは『羽根 ~lay down my arms~』で、最後にCoccoはステージ右端、中央、左端で、それぞれバレリーナのお辞儀をし、ステージを後にした。
セットリスト
1. 強く儚い者たち
2. カウントダウン
3. 雲路の果て
4. 樹海の糸
5. 遺書。
6. 晴れすぎた空
7. 星に願いを
8. 風化風葬
9. やわらかな傷跡
10. 有終の美
11. BEAUTIFUL DAYS
12. お望み通り(新曲)
13. Raining
14. 海辺に咲くばらのお話
15. 藍に深し
16. 焼け野が原
17. 潮満ちぬ
18.(新曲)
19. 羽根 ~lay down my arms~
ダークサイドクイーンを宣言し、デビュー25周年より顔を見せない・出さないスタンスを示しているCocco。ライヴの場ではさすがにヴェールは被っていないが、それでも徹底してライティングは彼女の表情を映さず、シルエットになるようにしていた。ライヴ中、Coccoの顔があらわになったのは数回で、それも短い時間だった。衣装も黒いドレスで、それまでの純白やブルー、ピンクのドレスをまとっていた彼女のイメージとは異なっていた。
そして、この日はMCが全くなかった。なので、メンバー紹介もなかった。活動休止前の彼女のことばは激情型で、再開後は彼女のほんわかとしたキャラクターが垣間見えるひとときになっていた。MCなしは個人的にはアリで、歌と演奏にすべてを注ぎ込むという、彼女の姿勢だと受け取っている。セットリストはツアー中固定と思われるが、日程をこなすにつれて成熟度を増していくはずだ。個人的に、この後の東京公演にも行く予定なので、楽しみにしている。
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