パリ、テキサス(1984年)
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最終更新日:2022/10/22
ヴィム・ヴェンダース トラヴィス, パリ
妻子を捨てて4年間失踪していたトラヴィスは、テキサスの砂漠で行き倒れになっていたところを発見される。引き取りに来た弟ウォルトと共にロサンゼルスの弟の家に行き、弟の妻アン、そして彼らが引き取って育てていた息子ハンターと再会する。
ある日トラヴィスは、妻ジェーンからハンター宛に定期的に送金があることを、アンから聞かされる。トラヴィスは中古車を買い、ハンターと共にジェーンがいるというヒューストンに向かう。
ヴィム・ヴェンダース監督による、ロードムービーになる。序盤、身なりが汚れ全く口をきかずぼーっとしたトラヴィスがなんとも不気味で、どういう話なのかという不安がよぎる。トラヴィスは少しずつ口を開くようになり、ジェーン、ハンター、ウォルト夫妻との楽しい思い出の映像を見ることなどによって、自分を取り戻していく。
しかし、この作品の見せ場は、なんと言ってもジェーンとトラヴィスが再会するシーンだ。ジェーンはマジックミラー越しに男性と会話する、少しいかがわしい店で働いていた。客側からは女性が見えるが、女性の側から客は見えない。トラヴィスは客としてジェーンを指名するが、うまく話せないまま立ち去ってしまう。
その翌日、再び店を訪れてジェーンを指名したトラヴィスは、ある男女の話と前置きして、自分が不器用な愛し方しかできず、ジェーンを傷つけてしまい、家庭が崩壊してしまったことを話す。はじめは相づちを打っていたジェーンだが、それが自分のことでもあり、マジックミラーの向こうの相手がトラヴィスであることに気づく。
ジェーンは部屋を暗くすることで、トラヴィスの姿を確認。しかし、ふたりの距離はマジックミラー越しで、これ以上には縮まらない。いや、トラヴィスの方が縮めようとはしない。ただ、ハンターには会いに行ってほしいとジェーンに言い、ホテルの部屋で再会するふたりを外から見届けて、自身はクルマに乗り込む。
トラヴィスはハリー・ディーン・スタントンで、ワタシが観たほかの作品は『エイリアン』でのノストロモ号乗組員のひとり。ジェーンはナスターシャ・キンスキーで、女優というより、80年代に日本のCMに出ていた人というイメージだ。
タイトルの「パリ」はフランスのパリではなく、テキサス州にある小さな街「パリ」を指す。トラヴィスが生を受けた地で、失踪したトラヴィスはこの地を目指していた。
UKロックバンドのトラヴィスは、この作品の主人公の名前をとってバンド名にしたそうだ。
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