チェ 39歳 別れの手紙(2008年)
1965年のキューバ。革命後の新政権にエルネスト・ゲバラの姿はなく、フィデル・カストロはゲバラからの手紙を公開。ゲバラは革命を他の国でも行おうとして、政権を離れていた。その1年後、ゲバラは変装し偽名を使って、ボリビアに入国する。
ゲバラは現地のゲリラと合流するが、ボリビア共産党は武力行使に難色を示し、部隊は資金援助を打ち切られる。戦いの都度兵力が減少し、現地の農民からもよくは思われていない。ゲバラは持病の喘息を抑える薬を切らしてしまい、体調が悪化してしまう。
『チェ 28歳の革命』との2部作の後編で、ボリビアでの挫折、そしてゲバラの死までが描かれる。作品を包むトーンは静かで淡々と進むが、そんな中でもゲバラと部隊が徐々に追い詰められていく。キューバ革命での方法論がボリビアでは通用せず、カストロにあたる存在の指導者を欠いているのが痛いように見えた。
ゲバラは、前作に引き続きベニチオ・デル・トロ。資金提供を打ち切りを言い渡すボリビア共産党のモンヘが、ルー・ダイヤモンド・フィリップスだった。マット・デイモンが、農民の代表で部隊へ立ち去りを交渉する神父役でカメオ出演している。64分くらいに登場し、出番は1分程度。マット・デイモンは、本作監督のスティーヴン・ソダーバーグとは『オーシャンズ』シリーズでつながりがある。
こんにち英雄扱いされ、革命家の代名詞的な存在になっているゲバラ。しかし、キューバ革命こそ成功したが、ボリビアでは、そしてその前にはコンゴでも、革命成功には至っていない。もちろんゲバラひとりだけの問題ではないが、実際はそこまで強大なカリスマ性を持ち合わせてはいなかったのでは?という気持ちにもさせられる。
ゲバラは政府軍に拘束されると、その翌日に銃殺される。撃たれてから絶命するまでの数秒あるいは数分の間、アングルがゲバラ目線になっている。立っていたのが銃弾を浴びたことでその場に崩れ落ち、揺れる視線に地面が映り、やがて霞んでいく。リアルだ。あまりにもリアルだ。映画で人が銃殺されるシーンは数限りなくあったはずだが、そのほとんどは銃を撃つ側からのアングルになっているはずだ。ベニチオもソダーバーグも、よくこれをやったなと思う。
ラストは、前作の序盤で船に乗ってキューバに向かうシーンになっている。ゲバラの革命家としての歩みが始まった瞬間に、つながっていることを示している。
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