シャーラタンズ(The Charlatans)@Liquid Room Ebisu
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The Charlatans シャーラタンズ
デビュー30周年を迎えたシャーラタンズが、コロナ禍もあって「30」を「32」に書き換えてアニヴァーサリーツアーを敢行。個人的にはハシエンダ以来10年ぶりになり、単独となると『Tellin' Stories』のツアー来日だった97年以来になる。
定刻を3分ほど過ぎたところでスタッフがPAブースに合図をし、その直後に客電が落ちてメンバー入場。『I Don't Want To See The Sights』でスタートする。ティム・バージェスだが、イントロや間奏の長さを利用し、スマートフォンを取り出してフロアのオーディエンスを撮影。この人のツイート頻度はかなり高いが、にしてもまさか演奏中に使うとは。続いて早くも『Weirdo』となり、ハモンドオルガンの電撃イントロが場内を貫く。
ステージは、後方向かって左にドラムのピーター・サリスベリーが陣取り、前方向かって右から左にキーボードのトニー・ロジャース、ギターのマーク・コリンズ、ヴォーカルのティム、ベースのマーティン・ブラントという位置取りだ。後方には、スポットライトが4基ほど設置されている。
2013年に亡くなったジョン・ブルックスは、2010年にはバンドから退いていた。ピーターは、その体格から一見パワー型かと思わせるが、実際はリズムキープに徹している。マーティンは実は唯一の結成時メンバーで、リーダー的存在でもあるとのこと。やや低めにベースを構え、低音リズムはクリアに聴こえてくる。
マークは常にうつむき気味にギターを弾くが、シャーラタンズの曲の多くはこの人のリフによって始まっていることに、改めて気づかされる。自らのソロだけでなく、カッティングに徹してマーティンやトニーの脇にも回っている。トニーはキーボードだけでなく、コーラスもこなしている。こうして見ると、4人が4人とも職人的で、そしてバランスが絶妙なまでにとれている。
となると、オーディエンスと直接向き合う役割を担うのは、必然的にティムになってくる。何度となく両手をあげ、最前の人たちにはマイクを向けたりスマートフォンを向けたりハイタッチしたりと、サービス精神が旺盛すぎる。いや、サービスというよりは、自らも楽しんでいるようだ。この人の声質は、以前とほとんど変わっていない。
序盤はどちらかというと聴かせるモードだったが、中盤の『One To Another』でギアが一段入った。と同時に、ステージを撮影するオーディエンスも増えた(笑)。ティム自身が何度となくスマートフォンを使っているので、このライヴではノー・プロブレムか。
終盤になると、ティムはステージを降りてフロア内に突入。スマートフォンを手にしてオーディエンスを至近距離から撮影し、戻るときはもらったらしいぬいぐるみを手にしていた。スマートフォンをライヴの最中にここまで使いこなす人は、見たことがない。一見若いアーティストの方がやりそうなことだが、演奏の流れを崩さないままとなると、ベテランの方が向いているのかもしれない。
『The Only One I Know』『North Country Boy』と、興奮するな、盛り上がるなというのは絶対ムリな二連発。このときはさすがにティムに釘付けになり、ほか4人にまで視線を送ることができなかった。そして、ダメ押しの『How High』で本編が終了。
アンコールは、『Blackened Blue Eyes』を経て、ティムがメンバーをひとりずつ紹介。オーラスは、もちろん『Sproston Green』だ。ハモンドオルガンの音色がリードとなり、ヴォーカル部が終わるとティムは早々にステージを後に。残る4人で延々とインプロヴィゼーションを繰り広げ、ラストはテンポを落とし、それまでの激しさがうそのように、静かめに終了した。
今回、久しぶりにセットリストをゲット。
デビュー30周年(32周年)は伊達じゃない。少し先輩のストーン・ローゼズも、後輩のオアシスも、既に解散している。このバンドは、ロブ・コリンズとジョン・ブルックスの死という悲劇がありながらも、解散ではなく「続ける」という選択をした。アルバムリリ-スのペースは恐ろしいまでにコンスタントで、彼らは今後もその歩みを止めることはないだろう。その今の彼らを、リキッドルームクラスのライヴハウスで観られたのは、贅沢以外の何物でもない。
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