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シガー・ロス(Sigur Ros)@東京ガーデンシアター World Tour 2022

公開日: : 最終更新日:2025/02/14 Sigur Rós/Jónsi

シガー・ロス(Sigur Ros)@東京ガーデンシアター

東京ガーデンシアターから10分程度で行き来できる有明アリーナでは、この日ビリー・アイリッシュの公演が行われることに。隣接するショッピングモールの有明ガーデンは、ビリーTシャツを着た人とシガー・ロスTシャツを着た人が散見され、館内にはの曲が流れていた。

定刻を5分ほど過ぎたところで客電が落ち、ステージ向かって右の袖から4人が登場。中央に、向かって右にゲオルグ、左にキャータン、奥にドラマーという配置。ヨンシーがキーボードを弾きながら、真っ暗な中で演奏がスタートした。

ステージセットは、電球がステージ前方に横並びに13個、中ほどと後方にも、それぞれ横に10個くらい設置されていた。線状の紐が10数本1セットで上部から垂れていて、これは単なる飾りではなく、ライティングの反映もしていて、赤やグリーンの彩りを増幅させていた。

個人的に、2005年ではじめて彼らを観て以来今回が8回目になる。そして、今回は最も座席に恵まれてしまった。チケットはアリーナ中央ブロックの7列目とあったが、着いてみると4列目だった。ヨンシーやゲオルグを、ここまで間近で観たことはなかった。

4人は黒を基調とした衣装で、ゲオルグはヨンシーを観つつベースを弾くことが多かった。ヨンシーは序盤マイクの調子を気にしていた様子だが、すぐ持ち直していた。ハイトーンヴォイスも、弓を使ったボウイング奏法も、相変わらず冴え渡っていた。

来日は5年ぶりだが、この5年の間にバンドにも大きな変化があった。ドラムのオーリーが2018年に脱退、そして2013年に脱退していたキーボードのキャータンが復帰。日本でこの人を観るのは、2012年以来実に10年ぶりになる。結果、バンドは現在も3人編成で、ドラマーはサポートだ。

そのキャータンのキーボードセットに、4人が寄って演奏するシーンが何度かあった。シガー・ロスは全員が複数の楽器をこなすが、このときヨンシーはキーボードを、ゲオルグは鉄琴を、ドラマーはキーボードを弾いていた。

バンドを牽引するのはヨンシーだが、演奏を制御していたのはキャータンに見えた。多くのバンドはドラムに合わせて演奏するはずだが、ここではドラムもキャータンに合わせているように思えた。

キャータン復帰前の3人編成のときは、ダークでへヴィーな世界観になっていた。個人的にはその音楽性も好きだが、キャータンが復帰したこのライヴは、全般に明るいトーンに包まれているように思えた。この人がいるといないとで、こうまでバンドの性格が変わってしまうとは思わなかった。

そのキャータンは、キーボードのほかトロンボーンやギターもこなしていた。ヨンシーと2人だけでの演奏や、ほかの3人がステージを後にしてこの人だけのソロもあった。

至近距離で観られたことで、いろいろと細かいところにまで目が届いた(反対に、バックドロップの映像にはほぼ目が行かなかった)。ヨンシーは2本のギターを使い、うち1本はかなり年期が入っていてボディが痛んでいた。弓を右手で弾くということもあってか、弓が当たっているであろう箇所だけ擦れていた。

ゲオルグのベースが、思った以上に重要だった。リズムキープに留まらず、ヨンシーがボウイング奏法でシューゲイザーに走っているとき、メロディーラインを形成していたのはこの人のベースラインだった。ドラマーはステージの最も奥に陣取り、3人プラスサポートという位置づけが明確にされているようだった。

終盤、ヨンシーはマイクスタンドを離れてステージ前方に歩み寄る場面があった。それも一度や二度ではなく、その都度アリーナは湧いた。客席側に深々と礼をすると、その屈んだ状態のままギターを弾いていた。かつては甘いマスクの印象だったが、キャリアを重ねた今のこの人の表情には年輪が刻まれ、渋味が増したように思えた。

開演前、2部構成で途中休憩が入ることがアナウンスされていた。結果は以下の通り。

開演:19時5分
第1部:1時間15分
休憩:15分
第2部:1時間20分
カーテンコール:5分
終演:22時

4人が揃って客席に応えるさまも恒例で、一旦は袖に下がったが、再び登場するとまた応えてくれた。ヨンシーは、笑みを浮かべながら叫び声を発していた。

約3時間のステージになったが、不思議と長いとは感じず、むしろあっという間に終わってしまったように思えた。キャリアを総括したようなセットリストになったのも、ある意味当然だったろう。バンドは、ツアーはしていたものの、アルバムは2013年の『Kveikur』以来リリースされていない。しかし、キャータンが復帰したのはいいきっかけになるはずだし、近いうちに新譜が届くのを期待してもいいのではないだろうか。

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