*

スチームボーイ(2004年)

公開日: : 最終更新日:2022/07/26 大友克洋 ,

スチームボーイ

19世紀、万博開催を控えたイギリス。マンチェスターに住む少年レイのもとに、父エディと共にアメリカのオハラ財団で研究している祖父ロイドから、金属の球体が届く。レイはロイドの手紙に従い球体を持って逃げるが、財団の使者に捕まり、万博会場のパビリオンに連れていかれる。

レイは、実験中の事故により身体の一部を機械で補強していた父エディに会う。エディはパビリオンが科学要塞「スチーム城」だと言い、球体はその動力源となるスチームボールだった。レイは父の研究を手伝うこととなるが、財団の狙いは万博を利用した各国への軍事兵器の売り込みだった。ロイドは、研究に取りつかれたエディを止めようとし、捕らわれの身となっていた。

産業革命期で、陸上は蒸気機関車の運用が始まるが自動車はまだ、空の飛行は気球や飛行船で飛行機はまだ、というのが当時の状況。そこへ来て、スチーム城はまるでラピュタ城か宇宙戦艦ヤマトの白色彗星の人工都市かと思わせる、圧倒的な威圧感がある。

100年以上前の時代設定だが、ビッグベンやタワーブリッジといったロンドンを象徴する建造物は既にあって、そこを舞台にレイがスチームボールを駆使して空を飛ぶさまは、観ていて気持ちがいい。そんなレイを、ロイドは「スチームボーイ」と呼ぶ。

大友克洋が原案・脚本・監督を務めた、アニメ映画になる。緻密なタッチで描写される街並みや機器類は『AKIRA』然り、キャラクターデザインも、英国人のはずだがどこか日本人っぽい表情になっている。漫画家はアニメ制作の中心に立つ事例はが先駆者だが、大友は手塚以来と言っていいと思う。

声優陣は、ほとんどが俳優だ。レイを鈴木杏、祖父ロイドを中村嘉葎雄、父エディを津嘉山正種、オハラ財団会長の孫娘スカーレットを小西真奈美、エディとはライバル格のロバート・スチーブンスンを児玉清、ロバートの部下デイヴィッドを沢村一樹。ロイドの中村は滑舌が危うかったが、老人役につきギリギリOKかな。

関連記事

ユリイカ 1988年8月臨時増刊号 総特集=大友克洋

文芸雑誌「ユリイカ」で、かなり前だが1988年夏に大友克洋特集号が発表されていた。 出

記事を読む

大友克洋『童夢』

巨大団地にて、謎の死亡事件が連続発生していた。警察が捜査に取り組む中、ひとりの警察官が転落死

記事を読む

  • 全て開く | 全て閉じる
PAGE TOP ↑