ヤングガン(1988年)
西武開拓時代のニューメキシコ州リンカーン郡。牧場主タンストールは、流れ者の少年たちを引き取っては、彼らに仕事を覚えさせたり教養を身につけさせたりしていた。州の利権を貪るマーフィーは、邪魔だったタンストールを射殺。流れ者たち「ヤングガン」は、タンストールの仇討ちを志す。
リーダー格のディックはマーフィー一味を逮捕して法で裁くよう諭すが、ウィリアムは手段を選ばず次々に射殺。ヤングガンは、逆に賞金を掛けられ狙われる身になってしまう。ウィリアムはやがて「ビリー・ザ・キッド」と呼ばれるようになり、ディックが賞金稼ぎに射殺されると、ビリーがヤングガンのリーダーとなる。
実在したアウトローのビリー・ザ・キッドと、リンカーン郡戦争を描いた作品になる。個人的な見方として、西部劇映画は1950年代から1960年代にピークを迎えている。その後、1980年代後半から1990年代に新しい感覚で西部劇を描写する動きがあったと思っていて、本作もその一角を担っている。
ヤングガンのメンバー、ビリーをエミリオ・エステベス、ディックをチャーリー・シーン、ドクをキーファー・サザーランド、チャベスをルー・ダイアモンド・フィリップスと、若き俳優たちが揃っている。一方でタンストールをテレンス・スタンプ、マーフィーをジャック・バランスと、大物が脇を固めている。
エミリオ・エステベスはそれまで『アウトサイダー』『セント・エルモス・ファイヤー』などの青春映画に出演していたが、本作のビリーが決定的な役になった。ルーは、本作の前年に『ラ・バンバ』で主人公リッチー・ヴァレンスを演じている。
エミリオとチャーリーは実の兄弟で、チャーリー・シーンは『プラトーン』『ウォール街』でブレイクした直後というタイミング。なのに、前半で射殺(それもほぼ無駄死に)されてしまったのには、初見のときは驚いた。がしかし、一見冷静な判断を下そうとするディックから、実行力でのしあがるビリーにリーダーが交代するのは、時代的に必然だったとも思う。
当然写真やビデオのない時代で、ビリーの武勇伝は新聞によって広まっていた。中盤の酒場での場面で、賞金稼ぎはビリーを狙っていることを得意気に語るも、ビリーの顔を知らない。その場にいたビリーは素性を隠して近づき、拳銃に触らせてほしいと下手に出て、弾丸を抜き取って返すと直後にその男を射殺する。21歳の若さで生涯を終えたビリーだが、エミリオ・エステベスの表情には少年っぽさがにじみ出ていて、役に合っていたと思う。
トム・クルーズがカメオ出演しているとのことだが、あらかじめその知識を得て観ないと気づくのは難しい。1時間38分あたり、クライマックスのヤングガンとマーフィー一味との激しい銃撃戦の中、撃たれて死ぬ男がそうだ。名もなくセリフもなく、わずか数秒の出演。テンガロンハットをかぶり長いヒゲをつけているので、観てもトム・クルーズとわからなかった。
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