クラッシャージョウ(1983年)
22世紀。宇宙のなんでも屋「クラッシャー」のジョウとそのチームは、とある上流階級の令嬢を運ぶ仕事を請け負う。しかし、宇宙船ミネルバがワープ中に操縦不能となってチームは気を失い、気がつくと通常空間で停止。冷凍保存されていた令嬢と依頼人は、姿を消していた。
チームは連合宇宙軍に不審に思われ逮捕されてしまい(やがて釈放される)、クラッシャー評議会からは謹慎処分を言い渡されてしまう。軍情報部のバードが、依頼人の正体が海賊であること、惑星ラゴールにいることを伝え、チームはそこへ向かう。軍の思惑は、ジョウたちを囮にして海賊組織を一網打尽にすることだった。
高千穂遥原作の小説を、挿し絵を描いていた安彦良和が監督して劇場公開された。公開時に小説は確か6作まで出版されていたが、劇場版はオリジナルストーリー。しかし、それまでの原作の要素も組み込まれていたと思う。『幻魔大戦』『宇宙戦艦ヤマト完結編』も同日公開されるという、アニメ映画興行合戦の様相を呈していた。当時、小遣いがかなり厳しかったが、それでも頑張って3作とも観に行った。
地球や太陽系ではない別の星系での物語は、『スター・ウォーズ』の向こうを張ったかのようだった。未来世界でハイテク化された乗り物や兵器や都市という舞台でありながら、それほど遠い世界でもなく、観ていて身近に感じられる。それは、キャラクターたちがみな人間臭いからだ。タロスとリッキーの掛け合いや、ジョウとマチュアに妬妬くアルフィンなど、観ていて微笑ましい。
『ダーティーペア』が劇中映画として上映されていたり、多くの漫画家が描いたモブキャラがあちこちに登場していたり、サンライズの当時のシンボルマークがしれっと出てきたりと、小ネタも満載だった。
キャストは、ジョウを竹村拓、アルフィンを佐々木るんで、ふたりにとっては代表作のひとつになると思う。リッキーを小原乃梨子、タロスを小林清志、連合宇宙軍のコワルスキーを納谷悟朗、ジョウの父でクラッシャー評議会議長ダンを久米明、令嬢こと実は科学者マチュアを武藤礼子。海賊には、大塚周夫、曽我部和行、弥永和子ら。豪華面々が脇を固めている。
それまでロボットアニメを多数制作していたサンライズが、ロボットが登場しないスペースオペラを手掛けたことで、注目していた。本作自体は優れた作品と思っているが、1話完結で都度事件に立ち向かう形式を取っているため、作品の世界観がアニメでは充分に表現されたとは言い難い。シリーズ化されず、単発になってしまったことが悔やまれる(89年にOVA化されてはいるが)。