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ディア・ハンター(1978年)

ディア・ハンター

ペンシルバニア州ピッツバーグの製鉄所で働く、ロシア系移民の男たち。マイケル、ニック、スティーヴンは徴兵でベトナムに行くこととなり、スティーヴンの結婚式を兼ねた壮行会が実施。ニックは、その場でリンダにプロポーズする。翌日、彼らは鹿狩りに出かけ、マイケルは一撃で鹿を仕留める。

マイケルは、ベトナムの戦場で偶然ニックとスティーヴンに再会。3人はベトナム兵の捕虜になってしまい、ロシアンルーレットを強いられるが、マイケルが機転をきかせてなんとか脱出に成功する。その後病院で回復したニックは、サイゴンでロシアンルーレット賭博に興じる集団に身を投じてしまう。

ベトナム戦争を題材にした映画は数多くあるが、本作が一線を画しているのは、ロシアンルーレットを導入していることだ。その関連で、強引な設定も見られる。マイケルとスティーヴンは復員するが、ニックは現地で伝説のロシアンルーレットプレーヤーになり、車椅子生活になったスティーヴンに毎月送金している。何年も勝ち続けるなどありえないし、スティーヴンの送金先の病院をベトナムからどうやって知るのだろうか。

ピッツバーグ~ベトナム~ピッツバーグ~ベトナムと場面転換されるが、明確な区切りは示されず、いつのまにか遷移しているのが不思議な感覚だ。そして衝撃的なロシアンルーレットについ注目がいきがちだが、制作側が重きを置いていたのは、ピッツバーグでの生活の描写の方だと思われる。

マイケルたちが移民であり、コミュニティを成して生活していること。徴兵はランダムらしく、マイケルたちの友人スタンリーは免れていること。パートナーとの結婚やプロポーズといった、青春群像劇。復員後にマイケルはリンダと一夜を共にするが、恋愛感情というよりは同じ境遇に置かれた者同士がつながり合う姿のように感じた。

キャストは、マイケルを、ニックを、スティーヴンをジョン・サヴェージ、スタンリーをジョン・カザール、リンダを。監督はマイケル・チミノ。本作はアカデミー作品賞、監督賞、助演男優賞などを受賞するなど軒並み評価が高く、マイケル・チミノにとっては代表作になっている。

目を引くのは狂気にまみれてロシアンルーレットに興じるクリストファー・ウォーケンだが、や高倉健はデ・ニーロの演技の方に刺激されたという記事を読んだことがある。高倉健は出過ぎず周囲を引き立てていると評し、松田優作は演技をしていないと思わせる(くらい自然に見える)ことこそがすごいと評していた。

調べてわかったことだが、メリル・ストリープは本作がほぼスクリーンデビュー。そして、プライベートではジョン・カザールと婚約していた。カザールは癌を患っていて、制作会社は降板を促すも、デ・ニーロやストリープらが反発したことにより、出演することができた。カザールは、本作の公開を待たずに亡くなっている。

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