ブライアン・イーノ(Brian Eno)『14 Video Paintings』
ブライアン・イーノが80年代にVHSで発表したふたつの映像作品が、2005年に『14 Video Paintings』というタイトルでDVD化されている。
『Mistaken Memories Of Mediaeval Manhattan』は、イーノがニューヨークに住んでいた頃、マンハッタンのマンションの窓から見える景色をベースにしたインスタレーションになる。アングルはほぼ変わらず、日の出から日中、夕暮れ、日没後という、時間の経過によって街並みの彩りが変化してさまを捉えている。映像に合わせて流れる曲は、『Music For Airport』や『On Land』などからだ。
当初、イーノはニューヨークには限定的に滞在する予定だったが、結局5年間住み着いたという。時期的には、自身の活動のほか、トーキング・ヘッズやデヴィッド・バーンとのコラボレーションの時期だったし、u2『The Unforgettable Fire』制作のためにアイルランドのスレイン城まで渡っていた、という想像をしてしまう。
『Thursday Afternoon』は、裸体の女性を被写体とした抽象的な映像になる。見始めたときは静止画かと思わされるが、少しずつ女性が動き、また色彩も変化していく。同名のアルバムともリンクしているのだが、ここで使われているのはアルバムの曲とはミックス違いで、収録時間もアルバムは62分なのに対し、この映像は74分だ。
どちらも、メニューにて「Vertical」「Horizontal」から選択するようになっていて、前者は横型アングル、後者は縦型アングルでの映像表示になる。VHSのときは、前者のみだったと聞く。
正直に言うと眠気を誘う音と映像で、ヘヴィーなイーノファンや映像制作を職業にする人でなければ、需要がなさそうな作品だ。がしかし、今観ると少し古くさいが、試み自体は斬新。40年前に作られ、商品化されたという早さには感服する。80年代前半というと、MTV全盛でプロモーションビデオが作られまくっていた頃のはずで、この映像作品はそれらとは真逆に位置している。
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物持ちがいい性分で(物を捨てられないとも言う)、狭い自宅を更に狭くしている状態だが、たまには