機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島(ネタバレあり)
宇宙世紀0079年、ジオン公国と地球連邦軍との戦争のさなか、オデッサ作戦参加前に補給を受けるためベルファストに立ち寄ったホワイトベースは、アレグランサ島に潜むジオン残党の掃討を命じられる。
アムロ・レイはガンダムで島に降り立つと、ザクと交戦。崖から落ちて負傷し気を失ってしまうが、ククルス・ドアンと子供たちのコミュニティに保護され、傷の手当ても受ける。子供たちは自給自足の生活を送り、アムロはガンダムを探しながら子供たちの手伝いをする。
1979年から1980年にかけてテレビ放送された「ファースト・ガンダム」第15話が翻案され、108分の劇場版として公開された。テレビ版では、ガルマ・ザビを倒し次なる敵のランバ・ラル部隊と戦う場面転換期に該当し、一年戦争の本筋からははずれている。劇場版3部作でも、全カットされている。
がしかし、ドアンがジオンの脱走兵であり、かつて自らが殺めてしまった民間人の子供たちを引き取って育てるという状況、それにアムロが絡んでくるという、敵味方という図式とはまた異なるところで戦争の恐ろしさを表現した、異色のエピソードになる。映画化の価値は、充分にある。
原作は『THE ORIGIN』漫画版とのことだが、未読につき、ファーストのイメージを脳内にめぐらせながら観た。オデッサ作戦前だがホワイトベースの男性クルーの軍服は統一され、艦長ブライト・ノアはアムロたちを名前に階級をつけて呼んでいた。恐らくは、ジャブローで正規軍の認定を受けた後なのだろう。スレッガー・ロウがクルーに加わっていて、リュウ・ホセイはいなかった。
アムロが気を失った際に見た夢の中に、父テム、母カマリアが登場。そして、赤いザクとの戦闘シーンがあり、シャア・アズナブルも。レビル将軍のもとにはエルラン中将が、マ・クベのもとにはウラガンがいて、モブキャラの配置もちゃんとされている。マ・クベのデスクには、坪が置いてあった。舞台を限定的にしつつも、いろいろ小ネタを組み込んでくれているのが嬉しい。
テレビ版では島は特定されていないが、本作のアレグランサ島は実在する島だった。ドアンが面倒をみる子供の数は、大幅に増えていた。ドアンはかつてサザンクロス隊のリーダーで、その戦果と実力は赤い彗星シャアにも並ぶとされていた。
ガンダムのボディが、山下公園ガンダムファクトリー仕様に近くなっていたことに感激。また、サザンクロス隊と連邦のジムによる市街地戦は、とても新鮮だった。モビルスーツをガンペリーで輸送する場面が2度あって、ジョブ・ジョンがフィーチャーされたのも嬉しかった。ただ、不満もある。アムロ以外のパイロットたちが、ポンコツすぎる。カイ・シデンやハヤト・コバヤシはまだしも、スレッガーはもっと活躍してよかったのに。
キャストだが、ファーストのときと同じ人はアムロの古谷徹、カイの古川登志夫、シャアの池田秀一の3人と思う。鬼籍に入った人も少なくなく、そうした中で43年経っても同じ役を演じる3人は、最早レジェンドだ。母親がララァ・スンを演じていた潘めぐみは、セイラ・マスを担っていた。
ドアンは、現在24歳の武内駿輔。68歳の古谷徹とは親子いや下手すりゃ孫ほど歳が離れているが、風格に満ちた役柄を堂々と演じ、古谷と渡り合っていた。この人を以前テレビで観たことがあって、声を何種類にも使い分けられる超人的な技術を披露していた。山寺宏一の後継者的な立ち位置にあると思う。
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