*

ユリイカ 2007年11月臨時増刊号 総特集=荒木飛呂彦

公開日: : 最終更新日:2024/06/19 マンガ版 ,

ユリイカ 2007年11月臨時増刊号 総特集=荒木飛呂彦

美術手帖 荒木飛呂彦特集』を読んでいたとき、文中にしばしば引用されていたのが、『ユリイカ』の荒木飛呂彦特集号だった。2007年に発行されている雑誌だが、まだ販売していたので購入。増刊号で、一冊まるごと荒木飛呂彦特集だ。

この本に関するネット上の評判は、必ずしも好意的ではない。実際、私も読んでいて「ん?」と思ったところはいくつかある。巻頭が荒木と斉藤環と金田淳子という人との対談なのだが、終盤は金田が暴走してほとんど「やおい」についての妄想話になり、荒木がすっかり引いてしまっていた。その次の草森紳一という人の文章も、足や靴に着目し第4部の広瀬康一と吉良吉影との戦いをピックアップしているのだが、広げまくり脱線しまくったあげく、まとまりのないまま終わってしまっている。

ただそれでも、以前第4部前半で挫折し、アニメ放送と2012年の展開催を機に、詰め込むように1か月で107巻を読んだ身としては、興味深い文章がいくつかあった。この本が刊行されたのは、『ジョジョ』連載20周年で、第7部『スティール・ボール・ラン(SBR)』連載中というタイミングだったようだ。

『ジョジョ』には「パワーのインフレ」はないが「ルールのインフレ」があり、それこそが魅力なのだという指摘。「パワーのインフレ」とは、同じ週刊少年ジャンプに連載されていた『キン肉マン』『ドラゴンボール』などに見られるような、次々に強大な敵が現れては主人公が友情や努力の後に勝利する、というサイクルを指している。しかし『ジョジョ』は、特にスタンド戦以降はルールが複雑化され知能戦に持ち込まれている。「ルールのインフレ」を発明したことこそが『ジョジョ』の快挙で、『デスノート』がその後継にあたるとしている。

女性キャラクターに着目した文章も面白い。『ジョジョ』以前の短編『ゴージャス・アイリン』までさかのぼり、第2部のリサリサや第5部のトリッシュを経て、第6部で承太郎の娘徐倫が主人公になるまでを考察している。第1部でエリナがディオに強引にキスされるが、その後エリナが泥水で口を漱ぐシーンがあって、これは初めて読んだときにすごいと思った。また、文中では具体的に触れられていないが、第7部でディオの母親が炊き出しを素手でディオに与えているシーンがあったが、これは『どろろ』でも読んだことがある。

ファンサイトの管理人による、熱い文章も見逃せない。「ジョジョ立ち」を命名したのもこの人だそうで、その2年後には『現代用語の基礎知識』に「ジョジョ立ち」が掲載されたそうだ。また、「ジョジョ立ち」を体現する友人がいて、ハチ公前や大阪城前で数100人による「ジョジョ立ち」が敢行。それが荒木サイドの知るところとなり、荒木の記念パーティーに呼ばれたそうだ。これって、すごい。

関連記事

ジョジョの奇妙な冒険 第3部:空条承太郎

舞台は第2部から50年後の1989年、つまり現代の雑誌連載時と同じ時間軸になり、そして主人公

記事を読む

ジョジョの奇妙な冒険 第5部:ジョルノ・ジョバァーナ

第4部から2年後の2001年、今度はイタリアが舞台。承太郎の命を受けた広瀬康一が、ある男の身

記事を読む

ジョジョの奇妙な冒険 第7部:スティール・ボール・ラン

19世紀後半、アメリカ大陸を横断するレース「スティール・ボール・ラン」が開催され、それぞれ腕

記事を読む

ジョジョシリーズのスピンオフも収録『死刑執行中脱獄進行中』

ジョジョシリーズ1本のように思われる荒木飛呂彦だが、短編集もいくつか出している。そのひとつ『

記事を読む

ジョジョの奇妙な冒険 第6部: 空条徐倫 ―『石作りの海』(ストーンオーシャン)

2011年のアメリカが舞台で、単行本のカウントが1からになっている(ジョジョシリーズ連番も併

記事を読む

  • 全て開く | 全て閉じる
PAGE TOP ↑