ブラック・ジャック 劇場版(1996年)
アトランタオリンピックで、男子棒高跳びや女子100メートルなど一部の競技で、従来では考えられない世界新記録が連発する。また、芸術の分野でも、無名の少女が描いた絵画に高値がついた。彼らは超人類と呼ばれたが、いずれも短い命で亡くなっていた。
ブラック・ジャックは、超人類たちの入院管理をしている製薬会社のジョー・キャロル・ブレーンから、彼らを蝕んでいる病原菌の究明を依頼される。ブラック・ジャックは、手術によって病原菌が大量のエンドルフィンを分泌させていることを突き止めるが、ジョー・キャロルの指示による投薬に病原菌が混入していたことが判明。研究を断ろうとするが、ピノコを人質に取られてしまう。
手塚治虫の代表作のひとつ『ブラック・ジャック』を、出崎統監督で制作。実際にアトランタオリンピックが開催された、1996年の11月に劇場公開された。ストーリーは手塚の原作にはないオリジナルで、主にアメリカを舞台としつつ、後半は病原菌の発生源を追ってアフリカに展開する。
静止画や繰り返しショットなど、『あしたのジョー2』『エースをねらえ!』『ベルサイユのばら』などでも見られた出崎演出が、今回も全開だ。病原菌に冒されたブラック・ジャックが、アフリカの砂漠で血を吐く静止画は、観ていてかなりショッキングだった。
キャラクターは手塚の丸っこい絵柄から離れた大人びた風貌になっていて、大人の雰囲気が漂う。ジョー・キャロルとブラック・ジャックとの駆け引きは、表向きは医師としての駆け引きだが、精神的には恋愛のようなそうでないようなという、ぎりぎりを攻めている。終盤では、彼女の悲しい生い立ちも明らかになる。元宝塚の涼風真世が声優を務めていて、役柄に溶け込んでいた。
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